コラム
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「また、来年があるさ。農業はそんなもんや」
計ってみると、腰の高さぐらいまであった。葉も隙間なく茂っている。
幹や葉ばかり成長すると実がつかない、と聞いている。これはちょっとマズイことになったなぁ・・・。
そこで昨日、種を分けてもらった「てるてる農園」のYさんに電話して現況報告すると、「そりゃあ、いかんな」という。電話はそれだけでおわったが、1時間ほどしてYさんは、奥さんと二人でヒョッコリ訪ねてきた。
「うあぁ~、大きいな」畑を見て驚いている。「肥料のやりすぎと違うか」
「いや、あまりやってないですよ」
「平野はん、これ以上大きくならんように、芯止めしたらどうや」
「そうですね、やろうかと思っていたんですよ」
というわけで、気休めにしかならないかもしれないけど、真ん中あたりの新芽を手で獲っていった。最初は、畝の一列だけそうしようと思ったが、「全部、やってしまいますよ」とぼくは言って、Yさん夫妻にも手伝ってもらい、4列の畝のすべての新芽を手でもいでいった。
「虫が出ているな、消毒せんといかん」とYさん。
「いや、このまま放っておきますよ。食われたら喰われたでしょうがない」
「平野はん、今年もし出来んでも、また来年があるさ。農業はそんなもんや、アハハッ」
Yさんは、そんな慰めを言って帰っていった。
そして今朝、藤田農園の藤田さんから電話があったので、この話をすると、笑いながら言った。
「うちの黒豆は全部、鹿に食われてしまった」。
7畝(200坪余り)の黒豆畑をまるごとやられたと言って、また笑った。
あっけらかんとしたその笑い声には、悔しさと情けなさと徒労感と諦めと達観が複雑に入り混ざっているのだった。暗に、「諦めが肝心」と言っているような(さすが、獣害と戦う丹波の百姓としてのキャリアが違うなぁ・・・・)。
しかし、この畑は鹿・イノシシ対策でお金と時間をかけて防柵もつくったのだから、そう簡単には諦められない。
その後、二人の農家さんの意見を聞くと、「だいじょうぶや、倒れんように支柱を立てたほうがいいな」「うちのもかなり大きいで。これから雨が降ったときに、タイミングよく開花すればだいじょうぶ。」
うーん、とにかく、やきもきしてもしょうがない。天に祈り、「また来年があるさ」と思うほかにない。 村長 平野