コラム
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丹波発:鹿がかじったマツタケのおすそわけ
Nさん宅でそのおすそわけをいただいた。
野菜や果樹をつくり、川にも山にも入り、一年中動き回っているスーパー百姓といってもいいNさんは、今朝も暗いうちから山に入った。昨日の雨で今日こそ獲れるかもしれないと・・・。
昼過ぎ、Nさんに頼んでおいた出荷用の丹波栗の「鬼皮剥き」ができたというのでとりにいった。Nさんは山から帰ってきたばかりらしい。
「マツタケ、採れたで」と、さりげなく笈籠を出してきた。
なんと! 籠いっぱいに見事なマツタケが。
「うわっ、何キロぐらいありますかね?」
「ちょうど10個で1kg」
「へぇー、けっこう数があるんやな。で、いくら?」
「11万円」とNさんはあっさり言う。
丹波産のなかでも、この「春日産」ブランドはとくに高い。
「今年は採れんわ・・・」と、Nさんはずっとそう言っていた。山入りの解禁から1カ月以上になるから、一日おきとして2週間このかた山に入っているのだろう。そして、この成果だ。日当計算したら・・・とふと考える。毎日こんな売上があったら、丹波の山はそれこそゴールドラッシュになるだろう。当然、マツタケの相場はがくんと落ちてしまうが。
送り先は、知り合いの医者だという。
「たぶん、そのお医者さんもだれかに贈るんやろな」とつぶやくNさん。
「写真を撮っておきましょう」と言って家にカメラを取りにいこうとすると、
「これ、やるわ」と、Nさんは籠から小さなマツタケをとりだした。
「いやぁー、ありがとう!」
鹿がかじった痕がある。鹿のやつ、マツタケを食べ過ぎて飽いたのか。商品価値はないけれど、いずれにしろ貴重なプレゼントだ。
秤で量ってみると33gあった。1kg11万円の相場で計算すると3,600円也。
いやはや、貧乏なわが家も、これで今年もマツタケにありつけた。鹿さん、Nさんありがとう。
追記:このマツタケがどの山で採れたかは、秘中の秘。なにしろ、親は自分の息子にさえ穴場を教えない。宝の山の入札額がドーンと上ってしまい、落札できなくなったりするからだ。