兵庫陶芸美術館:テーマ展「心を映すやきもの-三原研の炻器」

およそ30年にわたる三原氏の作陶生活は、まさに「求道者」のごとく、ストイックなものといえます。(紹介文より)

平成24年度著名作家招聘事業×テーマ展「心を映すやきもの-三原研の炻器」
平成24年9月22日(土・祝)~11月28日(水)

兵庫陶芸美術館では、国内外で活躍する著名な陶芸作家を招聘し、若き作り手たちに刺激を与えるとともに、幅広い人々により深く陶芸に親しんでいただくため、著名作家招聘事業「アーティスト・イン・タンバ」を実施しています。第7回となる今回は、独特の質感とかたちを追求して生まれた炻器(せっき)シリーズで知られ、近年、活躍の目覚ましい作家の一人・三原研氏(1958- )をお迎えします。
土木工学を学んでいた大学時代、友人に誘われた陶芸サークルでやきものと出会った三原氏は、「最初から最後までひとりで完結することの面白さ」に惹かれ、やきもの作りに打ち込んでいきました。やがて、本で見た巨匠たちの茶碗を真似て作ったり、各窯業地を訪ね歩いたりするうちに、「やきものを生業にしたい」と強く願うようになり、郷里である島根県の陶芸家で、民芸ともゆかりのある舩木研児氏(1927- )の内弟子となって2年間、研鑽を積みました。その後、自分の生きた証となるような、自分にしか出来ないやきものを作りたいと考えたとき、生まれ育った出雲の風土にこだわることが、それを可能にするのではないかと思い至り、1983年、生まれ故郷の出雲市佐田町で独立し、その12年後、現在も制作を続ける松江市宍道町に工房を移しました。
およそ30年にわたる三原氏の作陶生活は、まさに「求道者」のごとく、ストイックなものといえます。当初は、技巧を凝らした、装飾性の強い作品を発表していましたが、やがて自分の表現したいものとの違和感を覚え始め、土の質感とかたちだけで、力強く自分の思いが伝わるものを作りたいと奮起します。そして、独立独歩で自己と向き合い、試行錯誤を重ねていく中で、少しずつ余分なものを削ぎ落として生まれたのが、これまで見たこともないような不思議な質感と色合いを纏った、三原氏ならではの炻器シリーズでした。いわゆる焼き締めの一種ですが、「これまでにない、自分だけの焼き締めを作りたい」という思いから炻器と名づけたといい、作品はどれも静かに霊気を放ち、古代の祭器のような佇まいを見せています。出雲の山で採取した土を精製せずに他の土と混ぜ合わせることで、粗くざっくりとした質感を生み出し、さらに焼成方法を工夫することで、ヴァリエーション豊かな色合いと風合いを引き出していくというユニークな方法で制作された炻器シリーズは、シンプルながらも、見る者の心を強く揺さぶる存在感に満ち、作者の生き様をまざまざと伝えているように見えます。
本展は、装飾性の強い初期の作品から、炻器シリーズ最新作まで23点の作品によって、三原氏の造形の軌跡を紹介するものです。連綿と続くやきものの歴史の上に、現在(いま)を生きる作家が何を刻んでいけるのか。三原氏の作陶姿勢は、私たちに多くの示唆を与えてくれます。
マルテル坂本牧子(兵庫陶芸美術館学芸員)

<作品写真キャプション>
1)三原研 帯文花器 1991年 個人蔵
2)三原研 炻器花器(静寂) 2001年 田部美術館
3)三原研 炻器花器(起源) 2007年 個人蔵
4)三原研 炻器獣頭 2010年 個人蔵
写真撮影:古川誠

当館HP→ http://www.mcart.jp/24/exhibition/mihara/mihara.htm