赤とんぼが群れ飛ぶ棚田の稲刈り

「うぁ! これ、赤とんぼ?」「そうや、ここは多いやろ」

「ほとんど農薬を使ってないからな」と地元の人はいう。本能で生きる小さき生き物は正直なものだ。
昔は稲刈り時期になると赤とんぼの群れがあちこちで見られたが、近ごろは飛んでいても数匹。ところが、ここ朝来市・上八代営農組合の「コウノトリ育むお米」の田んぼには、まるで沸き立つように飛んでいた。黄金色の稲にまぎれて見えにくいが、稲穂の1メートルほど上をすいすい飛んでいる。
ここ但馬も丹波と気候風土が似ており、古代は「大丹波国」だ。田舎元気本舗では一昨年から、上八代営農組合の環境保全の取り組みを紹介したいこともあり、「コウノトリ育むお米」の販売をさせてもらっている。今日(9月11日)の午後3時過ぎ、日頃のお礼方々稲刈りの取材に訪ねた。
「先日はどうも」と、休憩していた皆さん(6人)の挨拶で迎えられた。先日(8月29日)、春日町国領の自治会が設置した太陽光発電の視察に来られたので案内した。 
「で、太陽光の設置、結論はどうなりました」と訊ねると、
「いや、まだ結論はでておらん。なにせ大金やからな」と藤本茂樹さん。
休憩がおわり、稲刈りが始まった。昨日の雨で収穫は少し遅れているので、あと数日はかかるという。
棚田で、しかも田んぼの形もいろいろだから、稲刈り機(バインダー・2条刈り)が入りにくい。稲刈り機が回りやすくするために、田んぼの角の稲を手刈りしていく。
 車を運転できる人なら誰でも稲刈り機を操作できるというが、藤本さんの運転を見ていると相当な熟練技がいるのがわかる。回りにくい狭い角にくると、稲を踏みつけないようにバックギアを入れて小回りして、小型戦車のようにどどっどっと、いとも簡単に稲を刈りこんでいく。その周りでは、誰に命じられるでもなく皆がみな自分の持ち場の作業に精をだす。
高齢化がすすむ過疎の村では必然的に集落営農になっていく。個々の家で米作りをしている丹波では、こうした共同作業はまだあまり見かけないが、たぶん近い将来その日はやってくるだろう。
狭い谷間の田んぼの周りは常緑の杉・ヒノキばかりだが、西空に浮かぶ雲や谷降ろしの風が間もなく訪れる秋の深まりを感じさせた。
帰りしな、濃い緑で覆われた黒豆の畑の写真を撮る。「味は丹波産にも負けんで」と藤本さんたちが自慢する黒豆である。(村長)









※ 写真下の2点は宮垣農園(丹波市氷上町)
朝来に向かう途中、宮垣農園にも立ち寄った。10町以上の米作り(その半分はJAS)のほかニンジンなどの野菜づくりもする宮垣農園は丹波市では5指に入る大規模農家だが、3家族でこなしている。農作業機械も設備類も何もかもデカイけれど、「北海道では中規模の部類に入る」そうだ。そして、アメリカの農家と比較したら「小規模農家」になってしまう。