コラム
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丹波発:藤田農園の草刈り手伝い
9月9日(日)昼前、弁当をもって藤田農園(京都府福知山市)の草刈りを手伝いにいった。棚田の田んぼはすでに稲刈りがおわっているが、麓のほうはまだこれからで、藤田さんは草刈りをしていた。
「まず、田んぼの稗を引いてもらえますか。だいぶ獲ったんですが・・・」と藤田さん。
稲穂のなかにところどころ稗が生えている。稗も五穀の一つで食べられるが、いまは(米に混ざると)雑草扱いになる。米作りでいちばん大変なのは取っても取っても生えてくる「田草」取りだ。
山ひとつ背中に重し田草取り (大島蓼太)
田草取蛇うちすゑて去りにけり (村上鬼城)
俳句の季語にもなっているのに、最近あまり田草取りは見かけない。ふつうの農家は、この稗や雑草対策として、田植えの前に除草剤を播いているからだ。
藤田さんは、除草剤のかわりにアイガモを田んぼに入れているけれど万全とはいかない。アイガモ自身も草取りは仕事としてではなく、田んぼの虫を食べたりするついでにやっているからだ。昨年は、キツネやアライグマに襲われてアイガモが全滅した田んぼが稗だらけになって、稲穂が隠れるほどだった。
空は曇っていたが蒸し暑く、小一時間、稗取りをして汗だくになった。農器具ハウスのなかで裸になり、弁当を食べながら雑談する。
「今年は米がきれいですよ。1町も減反したのに、収量はそれほど大きくは変わらない」と藤田さんは嬉しそうに話す。今年減反したその1町は、イノシシや鹿の被害の多かった棚田の田んぼである。10年間、藤田さんはこの棚田で、獣害と夏草との格闘をしてきたわけだ。そんな非効率・非生産的な田んぼなら、たいていの人はすぐギブアップしてしまうけれど、藤田さんは「所有者との契約が10年間だったから」と笑う。
「10年間、無農薬の田んぼなんか、ありまへんで。それだけでも価値があるんやけどね」
しばし休憩のあと、姫髪山の棚田に残した小さな田んぼの草刈りにいった。3畝ほどしかないこの田んぼの米は、稲木にハザカケをする予定で残していた。1週間ほど天日乾しをする。乾燥機のない昔は、田んぼの稲木は秋の風物詩だったが、近年はほとんど見られない。
「天日干しの米はやっぱり美味い」とどの農家さんも言う。それはわかっているが、いったん機械化すると元に戻れないのだ。
「どれだけ美味い米になるか楽しみやね」という藤田さんも稲木掛けは今年初めての経験である。
わずか3畝の田んぼだが、周りは急傾斜の土手なので草刈りに1時間はかかった。斜面に足を踏ん張ってする作業なので体力的にもきつい。しかし藤田さんは、この何十倍もこなしてきたのである。「よくやるなぁ・・・」と草を刈りつつ感嘆しきり。ここでも大汗をかいたが、ときとおり谷間を吹きぬける秋の匂いも含んだ風が心地よい。
草刈りがおわってから、稲木作りを手伝いますよと言ったが、たいした作業ではないから一人ですると藤田さん。このあと、丹波カルデンの草刈りが待っているので、棚田で採れたばかりの新米を10kg買って、3時半に棚田を後にした。 (村長)