コラム
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真夏の草刈りと“考えるアマガエル”について
自家用野菜のために借りている畑の土手の草刈は、今年になって7回目くらいだろうか。畑は1反もないが土手の面積は倍ほどあり、この傾斜地の草を刈るのに2時間はかかる。1カ月も放っておくと蔓草がからんできて、草刈り作業がきつくなる。だから面倒でも、草丈が短いうちに刈りこんだほうがいい。
草を刈りながら、棚田で無農薬無肥料のアイガモ米づくりをする藤田農園の藤田剛さんのことをふと想った。彼の草刈り作業は、私の10倍、いや20倍以上あるだろう。その藤田さんも「あと10年がんばれるかなぁ・・・」と言っている。草刈りでも手伝ってあげたいが、こちらにもその余裕がない。
国土の7割が山に囲まれた日本では、山の斜面を切り拓く棚田の開拓そのものが農業の歴史でもある。TPPで農業の効率化だ、大規模農業だといったところで、棚田の多い地域ではむずかしい。農業の効率化とは、除草剤や農薬をふんだんに使う方法である。
非効率的な棚田での米作りをする藤田剛さんは、
「農業は楽しいからやっていられる」という。
それにしても暑い、身体が燃えそうだ。ロンドンオリンピックのために寝不足気味で考えるのもシンドイ。草刈りが嫌になる。
そんなある日、まだ陽の高い6時前、ぼぅーとする頭と気だるい身体にムチ打って、草刈り準備をしているときに、ふと気づいた。屋外のヒートポンプ給湯機に、アマガエルが張り付いている。なぜか、給湯器の色に合わせて変身しているではないか。
かくれんぼしているわけでもなさそうだし、涼んでいるのかい?
「君は草刈りなどしなくて気楽でいいね」と声をかけるが、返事はない。姿勢のよいそのポーズから推察すると、何か考え事でもしているようである。目玉の奥をこっそりのぞいてみると、小さな謎のブラックホールが映っていた。(平野)