コラム
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「丹波米」 ガーガーじいちゃんは100歳まで生きる
村上農園は、丹波竜の化石が発掘された篠山川沿いの、丹波市山南町下滝にある。ここの地形は、「谷川駅」というJR福知山線の駅があるように、篠山川にそった細長い谷間の集落で、1時間に2本ほど電車がとおるだけで車の往来もすくない。
数年前、篠山川の岩場で化石が発掘されたときは大騒ぎ。全国的に有名になり、丹波市は「新たな観光資源が生まれた」とばかりに喜び、さっそく公募で「ちーたん」というかわいいキャラクターも誕生した。が、化石の発掘が続いたら立派な恐竜博物館でもできたのかもしれないが、最近あまり話題にもならないなぁ。
ガーガーじいちゃんと親しまれる村上鷹夫さんは、兵庫県下ではいちばん古いアイガモ米の生産者だ。田んぼれんげを鋤こんで有機肥料としている。アイガモ米づくりは、一時は普及に拍車がかかるように見えたが、それほどの広がりはなく、むしろ最近は高齢で止めていく人もいるようだ。米の付加価値が上がり、普通の米より高く売れるが、手間を考えると計算があわないのだろう。それでも「わしは100歳まで生きるで」と笑うガーガーじいちゃん(70歳)は20年続けてきたわけだ。
「アイガモは、アヒルとカモが結婚して生まれたんや」
スーツにネクタイしたら、どこかの社長でも通りそうなコワもてする四角い顔だが、子どもたちのためにビオトープをつくったりもする環境派。地域のためにもいろいろと活動し、とにかく忙しい人だが携帯を持たない主義らしく、なかなか連絡がつきにくい。
自宅の裏庭のネットで囲った小屋にアイガモのヒナがいた。
「アイガモは、アヒルとカモが結婚して生まれたんや」
ガーガーじいちゃんは、魚獲りの網で生後11日目というヒナをすくいあげていく。子どもたちは順番に網からヒナをとって箱の中に入れていく。ヒナはさかんにピーピーとなくが、子どもたちにとっては生きたおもちゃだ。首をつかんで箱の穴につっこむ子もいる。
「こら、首を持ったらアカン。もっとやさしく。それで何羽か数えてや」
ガーガーじいちゃんはひやひやしながら真剣そのものだ。
おもちゃのようにヒナを扱う子どもたちを見ながら、ふと今朝、妻が言っていたことを思い出した。
「最近、小さな子どもはおもちゃ遊びに興味がないらしいわよ。とくに女の子はファッションに関心があるんだって。若いお母さんの影響なのかしらね」
少なくともここでは、そんな傾向はなさそうだし、子どもたちはこの進水式という遊びを一生忘れないだろう。
村上農園ではアイガモ米を5反つくっているが、今日はすぐ近くの2か所の田んぼに35羽のヒナを放つという。1反あたり15~20羽放つ。
ここでも子どもたちは順番に並んで、1羽ずつ田んぼへ放していった。
「放り投げたらアカンで。そっと置くんやで」
付き添った親たちのなかにも童心にかえってヒナを放つ人もいる。明るい日差しのなか、意識を向ければ太古のロマンも香り、なんとものどかで平和な光景である。 村長 平野
※ 村上農園のアイガモ米の
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