コラム
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「丹波米」 藤田農園の棚田を下見にいく
この日(20日)、藤田農園の新たな棚田を下見するために訪ねた。京都府福知山市の郊外、田舎元気本舗から車で約30分のところ。福知山も広い意味での丹波で、「丹の国JA」(にのくにJA)という農協が近くにある。
藤田さんはハウスのなかで網の修繕をしているところだった。久しぶりに春めいた陽気でハウス内は気持のよい温さ。だが外の風はまだ冷たい。
「ハウスのなかは春やけど、まだ寒いでんな」と藤田さん。
藤田さんはこのハウスの周辺で2町(20反)ほど自然農法のアイガモ米を作っている。田んぼの周辺は電気柵だけでは獣害を防ぐことはできず、アイガモを守るために網を張りめぐらす。その網がイノシシ、イタチ、キツネ、アライグマなどに破られるので、農閑期になるとまとめて修繕するわけである。穴があいた部分を器用に繕っているが、それにしても大変な量の網の山だ。
昨年暮れ、藤田さんは1町ほどの棚田を所有者に返した。その棚田では毎年、1反まるごと鹿や猪の被害にあったりしていた。ハウスから車で15分ほどの離れたところにあるので管理しきれないし、棚田は畦の斜面が多いから草刈りも大変だ。根気強い藤田さんもさすがにギブアップというところか。
その代わり、この春から親類筋の棚田を6反借りることになっている。昔からそこの米は最高に美味いと、地元農家が自慢する田んぼなのだという。
「山の水もきれいやし、山の赤土ですごくいい田んぼ」と藤田さんも言っていたので、その棚田を下見に来たのである。
藤田さんの軽トラの後をついて、ハウスから南西方向へ15分ほど走り、山裾の集落のいちばん奥の行き止まりにその田んぼがあった(ここに借りた6反のうち3反分の棚田4枚があり、残りの3反はまた車で10分の所に)。
なるほど、すごい。棚田が連なる日本の原風景だ。
地名は「豊の郷」、形のよい山の名も美しく「姫髪山」という。いかにも美味い米ができそうだ。雑木の多い山なので水はきれいだし水量もある。
ミレニアムダイニングの予約棚田(丹波カルデン)
「この棚田の標高はどれくらい?」と訊ねると、
「いやー、知らんなぁ。しかし、ものすごい傾斜地でしょう。田んぼの面積より畦の斜面のほうが広い。草刈りがまた大変だぁ」と藤田さんは言って、他人事のように笑った。冗談ではなく、こんな急傾斜地の草刈は足を踏ん張ってやらなくてはいけないから大変な重労働だし危険でもある。
棚田は標高200メートルはありそうだ。おそらくいちばん下の田んぼまで数百枚の棚田が連なっているのだろう。
最奥にある三角形の田んぼはわずか3畝ほど。「ここで100kgほどは採れるかなぁ・・・」と藤田さん。
こんな猫の額のような田んぼでも、100kgも採れるというべきか。たいしたものだ。だから昔の人たちは山を切り拓き、我が子のように大事に育て守ってきたのだ。
4枚ある棚田のうちで一番大きいのが1反3畝。そのうちの1反分は、京阪神でお弁当チェーンとレストランを経営する(株)ミレニアムダイニングが“丹波カルデン”として予約してくれた(一昨年は丹波市内の丹波カルデンを予約)。
社長の重森貴弘さんはまだ40代前半と若いが、「食の原点はやはり農業ですから、社員や家族のためにも田植えや稲刈り体験をさせたい」と言う。重森さんはいずれ料理教室や農業経営にも参入したい考えもあるようだ。
今年は私もこの棚田での米づくりを取材がてらお手伝いしたいと考えている。(つづく) 平野