早春の食儀式

蕗のとうの年中行事
 今日もすっきりしない天気だが、肌を刺すような風がゆるやかになっている。犬と散歩する土手や畦、野原のあちらこちらに蕗のとうが顔を出している。

いつも春一番に採る蕗のとうは家のすぐ近くの休耕田。毎年同じところに、同じくらいの数の蕗のとうが出る。そしてまた、鹿のフンも同じらい点々と。
5年前までは梨園だったここは、夏に生い茂るセイタカアワダチソウが立ち枯れているばかりで、鹿が食べそうなものはどこにも見当たらない。鹿は何でも新芽を好むが、苦みがある蕗のとうは嫌いなのだろうか。
水洗いしながら小さなゴミを取ってザルにあける。その黄緑のなんと鮮やかなこと。まさに早春の色だ。苦みのある春草は身体の毒消しによい。だから今夜も蕗のとうの天ぷらを食べて早春を祝う。毎春いつも通りの食儀式である。  (村長 平野)