胸を張れる農業

  「農産物を阪神間に売りに行っていた父が身体を壊し、 大阪で就職していた自分が代わりを務めた。 お客さんから 『あなたのお父さんはいつもこんな安心な野菜を届けてくれて、 本当にえらい』 とほめられ、 その時初めて、 Uターンして後を継ごうと決心した」。

丹波市の若手農家で、 第1回丹波農業グランプリを企画した小橋季敏さんが、 閉会あいさつで話した。 「子どもに夢を与え、 地域を元気にする農業者」 を顕彰する同コンテストには、 最優秀賞の高見牧場をはじめ、 多くのすばらしい企業、団体が登場し、興味深かった。高見進さんは元々は他業種から参入してふる里に戻り、 高品質の「高見ブランド」肉の名を広く轟かせるまでになった。 民間流通業者と組んでレストラン向けのベビーリーフの生産を伸ばす丹波野菜工房、 高付加価値の柿を生産する桑村農園。いずれも、目の付け所と工夫、意欲次第で、至る所に潜んでいる宝を掘り出せる好事例だ。高度成長期、農家の父親は 「田んぼはしんどいだけ」 と、 息子を都会に送り込んでいった。今、グランプリ実行委員長・婦木克則さんの息子さんは他の先進農家で修業中だが、 正月休みに帰省した折、「お父さん、世界に胸を張れる農業にせんなんな」 と力強く話したという。 それが、 地域が胸を張れることにつながると思う。(E)
      丹波新聞の「丹波春秋」より(20120223日発行) http://tanba.jp/