コラム
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「耕せニッポン」に期す
二の句がつけず引き下がった
初対面でいきなりの提案ではあったが、その大先生は何十冊もの著書を出していて、そのなかには日本の農業の未来をとても心配し、前向きな提言をしている章もある。社会的影響力のあるこの先生なら、農業と若者をむすぶような提言書を企画にそって書いてもらえるのではないか、との期待があった。
ところが、こんな応えが返ってきた。
「自分のメシの種さえ稼げないような人間を応援したり援助したいとは思わないね」と。
何とも意外な回答だった。しかも余りにも明快な論理! 抜き打ちにバッサリ伐られた感じで、二の句がつけず引き下がった。
「耕せニッポン」というのは、中村文昭という人が北海道を拠点に2006年に始めた活動らしい。さっそくホームページを見ると・・・
「日本の食糧自給率や就農者の減少、ニートやひきこもりと呼ばれる若者たち・・・それらの問題を解決すべく立ち上がった」とある。
いやはや、すばらしい! 彼の活動は注目を集め、年間300回もの講演で全国を走りまわっているという。活動拠点も何箇所かに広がり、丹波・篠山市でもその農場があるというので訪ねてみた。
10月9日の9時ころ、黒枝豆の収穫に合わせて数十人の若者たちが集まっていた。この日はあいにく約束の時間が迫っていたので、現場を確認しただけで、中村氏に挨拶して5分足らずで去った。まだ40歳前後と思われる中村氏は、よい意味でのカリスマ性を備えているというのが第一印象だ。
「耕せニッポン」のコンセプトは明快であり、ある意味で誰しもが考えそうなことだが、誰しもができることではない。「そんな無謀な構想」をストレートに実行したことに脱帽するし、どんな新たな百姓ネットが形成されていくのか、その展開を大いに注目したいものである。
耕せニッポンのホームページ http://tagayase.com/