コラム
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本当に地方の時代がやってくる?
「ロックダウン(都市封鎖)を避けないといけない」
東京都の小池知事が3月23日の記者会見でそう訴えた。
政府の「緊急事態宣言」の発令が4月7日までずれ込んだのは、小池知事の発言にも一因があったという。「あれで世の中がワーッとなって、みんなわれ先にと新幹線に乗って地方へ散った」。この波紋が広がるのを待たなくてはならなかったからだというのである(「産経新聞」5月25日 参考)。
丹波の田舎にいては、そんな波紋が広がったとは想像もしなかったし、マスコミもそんな「波紋」を報道しなかったのではなかったか?
それはともかく、「緊急事態宣言」の発令と解除のタイミングは、とても難しいことだろうと思う。5月26日、「緊急事態宣言」は全国一斉の「解除」となったが、いつまた逆戻りするかもしれない。解除は、新型コロナとの共生が始まったことを意味する。
今後、「われ先にと新幹線に乗って地方へ散った」といったことが起らないことを願うが、おそらく、田舎(地方)への回帰は、これから静かにすすんでいくのではないだろうか。
グローバリズムの行き過ぎへの反省から、企業の国内回帰や各国への分散化、ネットを活用した在宅勤務も増え、働き方とともにライフスタイルも変わっていく。そうなると自然に、海のサケが川に戻るように、田舎への回帰につながっていく。
阪神淡路大震災や東日本大震災で被害を被った人たちが、それをきっかけに丹波へ移住した、という人を私は何人か知っている。「丹波に知り合いなり、縁があったの?」と尋ねると、「いや、まったくない」との答え。そういう私自身も、丹波には縁もゆかりもなかった。そういうIターン者が、これからじわじわ増えていくにちがいない。
近年、毎年のように日本列島は大きな自然災害に見舞われているし、巨大地震や津波もリアルに予測されている。したがって、コロナとの共生というのは、大自然との共生ということでもあるだろう。自然との共生は、各人の生き方そのものが問われているということでもある。言いかえれば、生き方の哲学が問われているということだ。
田舎暮らしというと、リタイアした人たちの夢といったイメージで語られることが多かったように思うが、これからは違う。世代をこえて、いろんな人、いろんな考え、いろんな生き方の人たちが、田舎回帰するだろう。人口減少で疲弊した地域が、そんなたちのエネルギーによって活性化する、そうなってこそ、この国は本当の意味で再生する。
2020.5.28 平野 隆彰