特別展 やきものを分析する-釉薬編-

会期:2016年12月10日(土)~2017年2月12日(日)

やきものは、人類が化学変化を意識的に応用し、生みだしたといわれていますが、現在に至るまでには、形や色合い、装飾などにさまざまな技術が取り入れられ、


変化してきました。やきものの製作過程を紐解いてみると、素材となる粘土や陶石などを採掘し、不純物を取り除いて精製したのち、成形作業へと移っていきます。成形されたうつわは、その後、器面に装飾が施され、焼成作業へと進んでいきますが、装飾においては、器面をカンバスに見立てて、写実的あるいは図案化して描かれる絵付けや、釉薬によって色彩豊かに色付けされた平面的な装飾とともに、器面への彫り込みや貼付け、型から写しとるなどの立体的な表現もみられます。
器面を装飾し、彩りを添えることは、やきものが誕生してまもなく始められており、世界で最古ともいわれる縄文土器には、縄目の文様だけでなく、火焔土器などにみられるような立体的な突起物の他、朱漆やベンガラなどで彩色された土器も発見されています。これら日常生活の道具のひとつであるやきものを飾る行為は、世界各地で広く行われており、釉薬が施されたやきものは、エジプトでは約5,000年前に、中国では約3,500年前につくられたといわれています。釉薬を使用することは、当初、器面が被膜に覆われることで、液体などの漏れを防ぐとともに、強度を高くするなどの実用的な目的で始まったと考えられます。しかし、次第に装飾的な要素が加わり、その多彩な色合いや光沢は、玉器や漆器、鉄製品などの素材を代替するようにもなり、青磁や灰釉、鉄釉など、さまざまな釉薬が生みだされ、多くの人々を魅了してきました。
この展覧会では、やきものの製作過程の中から、器面を彩るさまざまな色合いを生みだす釉薬に焦点をあて、その歴史や特徴を当館の古陶磁および、現代陶芸コレクションを通してご紹介します。また、釉薬の成分を化学的に分析するとともに、再現していく過程をわかりやすく解説することで、釉薬の奥深さを感じていただければ幸いです。

兵庫陶芸美術館