朝は目玉の浮ぶ粥 『雲水日記』より

粥 座(しゅくざ)
 飯台看(はんだいかん)の打ち鳴らす雲版(うんぱん)を合図に、大衆は直日(じきじつ)に先導されて食堂(じきどう)に向かう。

玄関と本堂の間で両側畳敷、中央一間半くらいの板の間だ。

 着座すると食事のためのいくつものお経や偈(げ)が唱えられ、各自持鉢(じはつ)を開いて飯台看から如法(にょほう)に食物を受ける。

 生飯(さば)と称する七粒ほどの飯粒をつまみ出して餓鬼に供え、看頭の柝木(たく)一声でいっせいに合掌してはじめて箸をとる。

 通称「天井粥」、目玉もヒゲヅラも映る薄い粥と、異臭を放つ古沢庵だけがすべての、涙ぐましいまでに慎ましい粗食。そして「三黙堂」の名の示すとおり、粥をすする音も、漬物を噛む音も、箸を置く音もいっさいが封じられたところ。

  やがてこうした厳粛な雰囲気の中で食事が終わると、注がれた一杯の茶で洗鉢(せんぱつ)し、フキンで拭って持鉢をしまいこむ。この一糸乱れぬ厳然とした食事作法はまた、仏道修行の一つであり、この仏飯が一日の求道の糧である。

 こうした飯台座(はんだいざ)においでこそ、最低の生活に最高の感謝という僧堂生活の真髄がうかがえよう。

出典:『雲水日記』絵で見る禅の修行生活 佐藤義英=画・文 禅文化研究所(平成9年第2版)