山と森、木の声を聴こう

noguchi.gif木材コーディネーター
能口修一(有限会社ウッズ代表取締役)
2006年、全日本木材市場連盟会長賞を受賞。


「木を伐って、家をつくり、森を保全する」サイクルを
地球温暖化、違法伐採、資源の枯渇などの問題に対して、再生産可能な木質資源利用を持続的に活用するために、世界が動きだしましたが、日本の林業という産業的側面からは、大きな課題が残っています。
木材価格の長期低迷で、林業が成り立たなくなっています。原木価格が30年前と変わっていないのです。これでは適正な管理をする費用もでません。今ある森を伐ってしまえば、再植林する費用もありません。木材生産の技術や設備が旧態依然としている中で、森林所有者は山へ投資できなくなりました。
人工林の中を見回すと、太い木と細い木があります。同時に植林しても、生育条件により優勢なものは大きく育ちます。適切な時期に間伐されないまま放置された森が多くあり、森林の公益性保全の対策として、税金で切り捨て間伐が進められています。山から搬出する経費までは認められず、伐っても出材できない現状があります。
間伐といっても、すでに建築の用材に十分利用できる大きさに育った木材です。
「木を伐って、家をつくり、森を保全する」このサイクルを守る取り組みを大切にしたいと思います。
もともと人工林や里山は、人の暮らしと密接な関係があったのです。現在では価値観が変わり、新たな、そして多様な関係を作り出す時期になったといえます。これからの森との関係を一緒に考えてみませんか。

 

適正な管理を必要とする「人工林」
今、ここにある森について、いつからどのようにして成り立っているのかを考えてみましょう。奥山にある原生林や鎮守の森は変化が少ない森ですが、身近な森は100年、200年の間に、人との関係の中で何度か姿を変えてきました。
あたりまえの様に昔からあった森だと思っていたところが、数十年前までに薪炭林や農業林として生活に密着した里山だったり、ある時は過度な伐採や山火事により禿山だったこともあるのです。
私は100年以上手入れの行き届いた人工林の中を歩くと、すがすがしい気持ちになります。釣りに行く源流域の天然林とはまた違った感覚を覚えます。
先人の植えた木を伐採し次代へ植林をする。引き継がれた時間の流れを感じます。
しかし、森の資源を永続的に繋ぐ林業を代々継ぐ林家は少なく、全国でも100年生の人工林は、限られた地域です。
人が植えた木は適正な管理を必要とします。野菜と同じく、過密な状態で植えたものは間引きが必要なのです。もやしのように育った薄暗い人工林を見ると、下草はなく、表土は流れ、森林が守る保水機能もなく、豊かな養分を生み出し海へ届けることもできません。

「日本は木がない国・・・?」
数年前に、東南アジアからの研修生と森のことについて話をする機会がありました。彼の住む村は彼が幼い頃に伐採が進み、その結果、森が消え、雨が降ると土が流れ、水害が増えたといいます。「日本には木がないのだと思っていた...。」彼の言葉に考えさせられました。 30年〜40年前では、天然の木材資源の伐採は環境についての配慮はほとんどなかったのでしょう。 破壊は、それまでの森の歴史からすると、一瞬のことです。日本では、まだその頃、拡大造林全盛の時代で、杉や桧の植林を全国的に推進していました。その木が育ち、世界第3位の豊かな森林資源保有国になりました。現在の人工林の約半分がその頃に植えられた木です。

なぜ? 木材自給率は約20%
丹波は山に囲まれ、一本一本の木が確認できる身近な森が多くあります。
規則性を持って並ぶ森の木々は、約半世紀前に人々の手で植えられた杉や桧の人工林です。雑木林を伐採し、苗木を植え、下草を刈り、間伐をし、時間をかけて成長し、やっと伐採の時期になりました。しかし、木材として建築に利用できる大きさに育った森の木は、現在の木材流通では簡単に使えるものではなかったのです。
決して木の品質が悪いわけではありません。 身近な山の木を使って建築をする。当たり前だったことが、今となっては少しばかり仕組みを考えないと使えないものになってしまいました。
昭和30年代後半、国内の木材需要は高まり、資源も少なかったことから、木材は早くに輸入が自由化されました。苗木を植えて、使えるようになるまでに、世界中から木材を買いました。その結果、先進国では世界に例を見ない森林保有国となり、国土の約67%が森林になりました。
そして木材の自給率は約20%。数字を見ると、森を持ちながら、他国の木材を買っていることになります。 (続く)