いのちの種を未来に

タラコと吉永小百合

「宇宙ってタラコだよな」
小松左京が、突然言った。
「吉永小百合の卵子をどれくらい集めたらタラコ1個の卵の数になるかな・・・」
星新一が咄嗟に反応した。
「人間の女性は一生のうち400個の卵子をつくる。タラコの卵はいったいどれくらいあるのかな」
手塚治が真面目顔で答えた(らしい)。
このシュールリアリスティックな会話は、野口種苗研究所の野口勲さんが目の前で実際聞いた話だという。不謹慎にも?、タラコと吉永小百合が結びついたのは、熱烈なサユリスト(小百合ファン)たちの共同幻想かもしれない。
当時、野口さんは手塚治の「虫プロダクション」に勤めていた。この3人の奇才が寄ると、いきなりこんな会話が始まった。そして、どんな話題でも奇想天外で咄嗟の反応があることに、若い野口さんはいつも驚かされたというのである。2010年2月7日(日)、姫路文学館でおこなわれた野口さんの講演は、上記の旧い(30〜40年昔の)エピソードから始まった・・・。


 種って宇宙だよなぁ

  「ひょうごの在来種保存の会」・山根成人さんの年賀状に、この日の講演案内(いのちの種を未来に)があった。日曜日に外出するのは少々おっくうだったが、講演テーマに惹かれて行ったところ、会場は満席(200人ほど)状態で、若い人の顔も多かった。
さて、野口さんは、タラコの卵と吉永小百合の卵子の数を計算し始めた。
世の中広いもので、ヒマで奇特な人物がいて、1個のタラコの卵を数えたところ、約30万個あったそうな。人間の卵子は約400個だから、
300,000÷400=750倍
つまり、1個のタラコの卵の数は、人間の女性750人分の卵子に相当する。
あるいは、人間の女性が750世代続いてようやく30万個の卵子ができる計算になる。
750世代ということは、1世代を25年として計算すると、
25年×750世代=18、750年
「仮に吉永小百合の卵子を集めて、タラコ1個の卵の数にするには18、750年ほどかかる」
これが、星新一が呈した疑問に対する1つの答えである。
卵の数で言えばそういう回答になるが、
タラコの卵1粒は約1ミリあるのに対して、人間の場合、約0.1ミリ。
ということは、体積的には10倍となり、
「仮に吉永小百合の卵子を集めて、タラコ1個の卵の体積にする」には、
18,750年×10倍=187,500年
ということになる。
野口さんは10分ほどシュールリアルな話で聴衆を惹きつけてから、本題である「植物の種」について語ったのだった。

 

ちなみに、この日の講演テーマ『いのちの種を未来に』は、2008年8月に創森社から出版した野口さんの著書のタイトルだ。講演後、さっそく野口さんにご挨拶して、1冊しか持ち合わせがないという本書を購入させていただいた。

 本書の内容については、おいおい紹介させていただくとして、表紙カバーの短いコピーは次のとおり。
――現在、野菜の種は入手しやすい大手種苗会社の種に偏っています。そして扱われている種のほとんどが、F1種の種です。そんな時代の流れに逆行して、私の店では、日本各地や世界の固定種野菜の種を集めて店先はもちろん、インターネットなどでも販売。それもこれも「日本の野菜を味の良い固定種にもどしたい」という一心からのことです。(本文より)

とにかく種の世界も不思議で神秘、面白い。
「種って宇宙だよなぁ」

by  T・H

  なお、野口勲さんは種苗店の三代目として、いまや希少となった固定種野菜の種を専門にネット販売している。関心のある方は、こちらへ。
野口種苗研究所 
http://noguchiseed.com      

ひょうごの在来種保存の会   http://blog.goo.ne.jp/sakura148