半眼の構えでマツタケの気配をさぐる

昨日も夕方前にミッチーの散歩がてらにマツタケ山に入った。これで2回目だ。
1回目のときは松の根元ばかりに目を凝らして見て回ったが、

「それじゃアカン。周辺を万遍なく見ないとだめや」と地元の先輩に笑われた。
そのことを野花志郎さんに報告すると、「そうや、マツタケはどこに生えてるかわからんから、根元の周辺を広く見ていくんや」と言って、「こういうふうにな」と実演してくれた。

松の木の下に静かに立ち、能役者のように、頭を少しずつ動かしながら視線を移動する。
あるいは、剣士が下段の構えで敵を油断させるために、わざと剣先をだらりとたらし、目は半眼のままで相手の殺気をさぐるようにじっと動かず、ただ地面を静かに見つめている。そうしてしばらくするとマツタケのほうからふわっとした気配を発してくるらしい・・・まるで眠狂四郎のような円月殺法・・・そんな感じの実演であった。

マツタケ山に囲った鹿よけの防獣網のなかに入り、実演を思い出しながら、100本ほどある松の根元の周囲を見つめてみたが、いっこうにマツタケの香りはしない。ひょっとしては葉隠れの術を使って、落ち葉に隠れているのではと思い、棒の先でそっと落ち葉をさぐったりもしたけれど、ウンともスンともそれらしき気配はしない。見つけたのは2本の毒キノコだけだ。能役者のように、また眠狂四郎のように松を渡り歩くうちにどっと疲れが出た。結局この日も40分ほどで下山することになった。

「昔は笈に山ほどマツタケを採ってなぁ、今日もマツタケ弁当かって言ったもんや」
それはマツタケ狩りの熟練技が要らなかった40年も昔のことである。