韓国・パルダン地域の有機農業

東アジア有機農業大会に出席

 市有研だよりの12月でも報告したが、11月の17日から19日まで韓国で東アジア有機農業大会が開催され参加した。韓国では早くから親環境農業法が制定され、国を上げて、環境保全型農業(減農薬)や有機農業が推進されてきた。1998年に農林長官に就任した、キム・ソンフン氏は元々、韓国の古くからある有機農業団体・正農会の顧問であり、就任後、親環境農業育成政策を発表し、99年には「親環境農業直接支払い」を実現し、韓国の有機農業は今や、日本の有機農業をしのぐ勢いで発展してきている。韓国正農会は日本の有機農業団体とも古い付き合いで、たびたび日本に生産者たちが訪問しており、市島にもよく見学に来られる。三重県に本部がある愛農会の小谷先生の影響で有機農業が始まった経緯があり、日本の生協団体とも深い結びつきを持ってきた。

突然、スピーチの通訳がなくなった訳は?

 今回の大会では、この元農林長官が最初の挨拶で、韓国の有機農業推進政策について説明した。その内容は、韓国の有機農業が政策を通じてどう発展してきたかなどの話で、今後の日本の有機農業政策にとっても大変参考になる内容ではあった。キム氏のスピーチが終わる頃、何故かキム氏から、ここからは通訳しないようにとの指示があった。我々外国人は、途中からキム氏が興奮して話しをされているにも関わらず意味がわからず終わってしまった。
いつも大会に関わっている韓国の有機農業関係者も初日のプログラムから突如として来なくなり、我々は何が起こっているのか理解できなかった。日本語が堪能な韓国の人に尋ねたら、来年、国際有機農業運動連盟(IFOAM)の大会が開催される、パルダン地域(韓国有機農業発祥の地であり、正農会の拠点でもある)で政府が進める開発計画が持ちあがり、有機農業生産者が開発問題をめぐって政府とトラブルがあるらしく元長官はスピーチの中でそれに触れ政府を批判したようでこの件に関して外国の代表団には聞いて欲しくない、ということであった。

農民の期待に反する「4大河川復興計画」

 現在、3000人の生産者が親環境農業(減農薬、有機農業)に取り組んでいるパルタン地域はソウル市内を流れるハンガンという川の上流にあり、有機農業が始まったのもソウル市民、2000万人の飲み水を守ろうという目標で広がった。ソウル市と韓国農協中央会は地域の生産者を対象に1995年から2005年まで低利子の融資をしてきた。この地域に新政権であるイミョンバク大統領は新たな河川の開発を計画しており、計画の中に100件以上の有機農家の耕地が引っかかっており、有機圃場81ヘクタールが突如として開発されることとなった。
大会でたまたま出会った正農会の農家に連れられ、同行していた村山氏とパルダン地域を訪れ、現地の直販店で開発に反対する農家が韓国の機動隊によって泣きながら連行されるビデオを見て大変ショックを受けた。イミョンバク大統領は選挙の前に、有機農業で有名なパルダン地域にマスコミを連れて訪れ、農民と手を取って、地域の有機農業の発展に協力していくことを誓ったが農民の期待に反し「4大河川復興計画」を打ち出した。
計画ではパルダン地域も含まれており、農家は政府の計画に従って何年も無農薬で耕してきた農地を捨て移住することを求められた。政府によると韓国の河川を今後予測される旱魃や洪水を防ぐための開発は必要であり、住民は政府に当然協力すべきであると勧告してきた。開発計画は韓国内部でも専門家や環境団体から批判があり、政府の開発計画はまったく意味がないとの批判もある。政府の公聴会に参加し、熱心な説明をしたが聞き入れてもらえず、昨年10月に政府側は現地の測量を1000人に機動隊をともなって決行。反対の有機農家、生協の消費者は座り込んで測量を止めさせようとたが、機動隊によって強制移動させられた。「大統領!貴方は我々の地域を大切にすると誓ったではないか!このことをわが子になんと説明したらいいのか?」と農家が泣きながら言っていた情景が今も頭を離れない。             (「市有研便り 2010年1月号」より)