農薬の“ドサクサ”規制緩和で子どもが危ない

日本のネオニコ系農薬の食品中の残留基準はEUやアメリカと比べると、なんと数倍から数百倍も甘い。 (週刊朝日  2013年7月12日号より)

 6月12日午後。頭痛や体調不良を訴え、小、中学生らが群馬県前橋市にある青山内科小児科医院の青山美子医師のもとへ駆け込んできた。
その後、12日に高崎市、13日には甘楽(かんら)町で無人ヘリコプターによるネオニコチノイド系農薬(以下、ネオニコ系農薬)・チアクロプリドの空中散布が行われていたことがわかった。

 6月9日の国際シンポジウムで、2004年と05年に群馬県で行われたネオニコ系農薬の散布が原因とされる患者が多数いたことを発表した、東京女子医大の平久美子医師によれば、青山医院を訪れた農薬の慢性中毒とみられる患者は06年8月から8カ月で1111人。うち549人が、果物やお茶、野菜を大量に摂取していた。

「その後も似た症状の患者が後を絶たず、果物やお茶の摂取をやめさせると、症状は改善され、消えました。さらにはお茶を飲み、桃とナシを食べて胸が痛くなったと来院した30代の女性の尿からは、かなり高い数値のアセタミプリドが検出されたのです」(平医師)

 これらの臨床結果から、お茶、果物などのネオニコ系の残留農薬が中毒の原因ではないかと疑った平医師が世界各国の残留農薬の基準値を調査し、日本だけが突出して高すぎることを問題視した。

 事実、日本のネオニコ系農薬の食品中の残留基準はEUやアメリカと比べると、なんと数倍から数百倍も甘く、特に果物、茶葉について、顕著な差がみられたのだ。しかも驚いたことに、日本では欧米と逆行して、一部のネオニコ系農薬についての残留基準がさらに緩和されていた。

 例えば07年10月に基準が改定されたネオニコ系のジノテフランの残留基準は、ほうれん草で5ppmから15ppmに、春菊で5ppmから20ppmに、チンゲンサイも5ppmから10ppmになった。さらには11年12月に改定されたネオニコ系のイミダクロプリドは、ほうれん草について従来の2.5ppmから15ppm、なすで0.5ppmから2ppmなどと緩くなった。いずれもネオニコ系をより使いやすくする“規制緩和”である。

 しかも、イミダクロプリドの数値が改定されたのは、11年3月の東日本大震災後。5~6月にパブリックコメントを短期間募集して、国民が放射能に怯えるドサクサにまぎれて改定していた格好だ。

 ※週刊朝日  2013年7月12日号

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