雷さんのとの約束

黒豆畑の草刈りをしていたら、突然、空が鳴って、天の穴から雷さんが落っこちてきた。
「おい、そこの百姓」

雷さんは、バク転しながらぼくに近づいて来て言った。
「相撲をしよう。このオレ様に勝ったら褒美に雨を降らしてやろう」
トラ模様のふんどしひとつで裸だった。童顔だけど背丈は3メートルもありそうだ。
「いやいや、勘弁してください。とても敵いまへん」とぼくは言った。
「雨を降らせてほしくないのか」
「いいえ、雨がほしい」
「それなら正々堂々オレと勝負しろ。オレが勝ったら、甲子園の阪神巨人戦に招待してくれ」
「えっ、雷さんも阪神ファンですか」
「もちろんだよ。今年こそ優勝だ!」
「チケットが手に入るかなぁ・・・。わかりました、西宮の友人に頼んでみます。でも、ふんどしひとつではだめだよ」
「ワッハハハ。よし、約束だぞ。一つ教えてやろう。オレ様の唯一の弱点はヘソにある。このヘソをくすぐられると・・・教えるのはそこまでだ」
雷さんはそう言いなり、ものすごい勢いで突進してきた。
ぼくは慌てて草刈り機を放り投げて、しゃがみこんだ。すると雷さんはぼくの頭を越えて、畑にどすんと尻もちをついた。
ぼくは雷さんの腹の上に飛び乗って、へそをくすぐった。5センチほど突きでた出べそだった。ドアの取っ手みたいなその出べそを思い切り引っ張ってやると、「シュー」と音がして、中から風が勢いよく出てきた。雷さんの体は見る見るうちに凋んで、ヒューという音とともに山の彼方へ飛んでいった。まるで甲子園の7回ウラの風船飛ばしのように。
その後、3分もしないうちに、ゴロゴロゴロ・・・大音響とともに天が破れたような土砂降りとなった。

1時間ほどして雨は止んだ。気温がぐっと下がって心地よい。
太陽の日差しが雲間にもれる山の彼方に、ぼくは言った。
「雷さん、ありがとう。また来てよな。黒豆の花が咲く頃に」

「海の日」の今朝も2日続けて雷雨。
きっとどこかで誰かと相撲をとって、またヘソを盗られたんだろう。   空太