持って生まれた本能にみがきをかけよ

寒い朝、ミッチィーの様子がおかしい。ご飯を半分以上食べ残し、小屋から出てこようとしない。シッポはだらんと垂れたまま、日課になっているボール投げにも反応しない。

七年前、道の駅に捨てられていた子犬の彼女がわが家に来てから二度めである。
昨年夏、彼女はマムシに咬まれて顎の下が風船のように腫れあがった。慌てて病院に運び注射を打ってもらうと翌日にはケロッとしていた。雑種犬は強いとよく言われるが、唖然とした。後で、近所の人に「うちの犬はマムシに二回やられたけど放っておいたで」とアッサリ言われ、また唖然。
「だいじょうぶよ、動物は体調が悪い時はじっと寝て治すから」妻に言われるまでもなくボクもそう思っているのに気が落ち着かない。
結局、2日間じっと伏せって何も口にしなかったミッチィーは、三日めにトロンとした目の光がもどり、食欲をとりもどしたのだった。
「本能という、君がもって生まれたすばらしい武器にみがきをかけることです。人間以外の動物、植物は、学校へも病院へも行かずに、すばらしい肉体の健康と、精神の健全さを持っているでしょう。」(『魔法のメガネ』)
だからGOは「とにかく本能のくもりや、くるいをとりのける」ために、無双原理という“魔法のメガネ”が必要なのだと言う。また、人の本能とは、世間一般に思われている本能=欲望ではなく、精神そのものだとも言っている。
本能の衰えを案ずるがゆえに、ボクは薬という薬をさけているが、不覚にもこの冬2回目の風邪をひき、咳があまりにもひどかったので、ついに薬をのんでしまった。数日後に控えた集落の一泊バス旅行で迷惑をかけたくないという思いもあったからだ。妻が買ってきた市販の薬をのんだせいかどうか、旅行前日に症状は治まっていた。
この三十年ばかり歯科院以外は病院に行ったことがなく、不調のときも薬に頼らないことを秘かに自負していた。しかし愛犬の自然治癒力には改めて感服させられたのだった。

永遠の少年GO・平野隆彰
「Macrobiotique 2013年4月号」より(日本CI協会発行)

註:GOとは・・・ジョージ・オオサワこと桜沢如一。