突然、八重桜に恋心?

村道の角にある二本の八重桜。ソメイヨシノが散った後いっせいに花開く。まるで、先日お付き合いで観た宝塚歌劇の「ベルサイユのばら」の舞台のように華やかだ。

春先は、次々と散りゆく花の哀れを鑑賞する後だけに、ピンクピンクの派手派手しい色が「ちょっと厚かましいなぁ」と、毎年同じことを思っていた。正直なところ、あまり好きな花ではなかった。
ところがどういうわけか、この春はちょっと違った。ハッと、思わず立ち止まり、その絢爛豪華さに見とれてしまったのだ。ひょっとして「ベルばら」を観たせいだろうか? なんたること!
じっと見惚れていると、八重桜の声がした。
「今ごろ私の美しさに気づいたの? この村に来て何年になるのよ!」
「すんまへん。もう9年目の春ですけど、派手なピンクがどうも・・・。それに桜は散りぎわが美しいと思うから」
「ふん、どうせ私は散り際が潔くないですよ。でもこれが私なの。それにしても、あなたはだめねぇ!ピンクが分からないということは、女心が分からないっていうのと同じなのよ」
「はぁ・・・面目ないです。そう言われていま思いだしました。昨年暮れにサンクレストという会社の社長の本をあうん社で企画出版したんですが、その社長さんは、ピンクがほしいという高校生の一言に閃いて、メガヒット商品をつくったんですよ。ウーン・・・、好き嫌いを言っていたらアカンなとぼくも反省したんです。女性にとってピンク色は、若さとエイジレスの象徴なんですねぇ」
「とにかく、あなたが私を好きになろうとなかろうと、私は前からずっとここにいたの。あなたがこの世に存在するかどうかに関わりなく、私はこれからもピンクの花を咲かすのよ」
「そうですね、おっしゃるとおり。新参者のくせに、はなはだご無礼いたしました。今のあなたは最高に美しい!百花の女王と言われるボタンなんて、あなたの足元にも及びませんよ。これからはあなたが花を咲かすときには、ともに喜び祝いたいと思います」

 この八重桜の花のいのちは2週間もあるかどうか。
「クジャクのように花を拡げるあなたをココロから愛します。この世にぼくが存在するかぎりはね」
今朝も八重桜に心のラブレターを送ってから、氷上高校で買った夏野菜の苗をまる一日かけて植えた。
もうすぐ5月の連休。八重桜の花が枝で枯れ果てて新緑が芽吹くころ、村(丹波)の田植えが始まる。