薪ストーブのある暮らし(5) 

篠山市にある王地山陶器所の陶工・竹内保史さんが薪ストーブを設置したのは5年前(2008年)のこと。

その前の年に買った築100年の古民家があまりにも寒くて、「石油ストーブ2台をがんがん焚いても寒いし、燃料代が月3万円もかかってしまった」。
これではたまらないというので、翌年の冬に間に合うように薪ストーブを買うことにした。
土台や防熱の壁やエントツ工事などはすべて自分でおこない、雨漏りが心配なのでエントツの屋根周りだけを業者に頼んだという。
ストーブの機種を訊ねると、「なんだったかな? さんたんさんにお任せだったから」と竹内さんは言って、カタログで調べていた。
機種は「ダッチウエストジャパンFA225 コンベクションヒーター スモール」という。
高さ750、幅560、奥行き410とコンパクトだが、カタログによると燃焼効率がとてもいい。ステンレス製でハチの巣状・円筒形のキャタリティックコンバスターという機能がついているので、それが低温度での(220度)の着火を可能にし、排出ガスをクリーンにするだけでなく、少ない薪で熱効率を高めるのだという。平均暖房面積は65~126㎡、最大熱出力は8,800kcl/時。
薪ストーブは10畳ほどのキッチンにあり、子ども部屋(6畳)とピアノを置いた部屋(6畳)がすぐ隣にある。ピアノ部屋と玄関口の部屋の間の襖を閉めておけば、この広さの範囲(20畳ほど)は十分温かいそうだ。天井が低いのでなおさら温かいだろうと想像する。二人の子供の手型を記念に残した磁器板が微笑ましいですね(写真右上)。

竹内さんは、大阪の専門学校(港南造形高等学校)を卒業してすぐ篠山に来て、王地山陶器所に勤めた。以来20年間、黙々とこの道一筋でやってきた。
「青磁を焼いているところは全国にも少ないし、こういう緻密な作業が好きなんです」
いかにも職人らしい寡黙な竹内さんが言うように、王地山焼(磁器)の特徴は形も色合いも繊細な感じだが、飾るだけの高級美術品ではなく日用的に使われ、値段は数千円というのが多い。
 王地山焼の歴史はそれほど古くない。江戸時代末期(文政年間)、当時の篠山藩主・青山忠裕(ただすけ)がこの地(王地山)に築いた藩窯である。三田藩で成功した京都の名工・欽古堂亀裕(きんこどうかめすけ)を招いて指導させ、青磁・染付・赤絵など中国風の磁器を模した繊細な磁器として地元で愛されたが、明治の廃藩とともに廃窯となった。そして120年後の昭和63年(1988)、篠山市が文化遺産としての価値を認め、村上さんという人が中心となって復興させた。その5年後に竹内さんが来て、やがて村上さんの跡を継ぎ、現在に至っている。
陶器所の運営は篠山市の委託を受けたNPO法人ノオトで、竹内さんはあくまで給料制の勤め人。竹内さん一人でやっていた時期が長かったが、いまは若い見習い陶工も一人いる。

古民家はずっと探していたが、なかなか良い物件が見つからず、値も高かかった。ピアノや合唱団の指導をしている地元女性と結婚したときもまだアパート暮らしを続けていた。しかし長女(小学1年生、長男5歳)が生まれて「部屋も狭くなったと感じていた矢先」に、運よく値も手頃で理想的な物件が見つかった。
その家は、陶器所から車で5分の殿町という集落にあった。リフォームされた白壁が美しく、立派な蔵や倉庫もあって、いかにも田舎の古民家風だ。「この蔵や倉庫が作業所兼アトリエにできる」と、竹内さんは将来への夢をふくらませた。
ところが住んでみたら・・・、昔造りの家は予想以上に寒かった。1年目の「燃料代月3万円」にもおどろいた。ひと冬で15~18万円は要る。薪づくの労力はかかるにしても原価はタダ、薪ストーブの代金は5年で元がとれると計算した。
「20年も住んでいれば顔も広くなって薪の確保には困りませんね。もう一人の薪ストーブ仲間と一緒に薪づくりをしています」と竹内さん。庭の薪小屋には山ほど積まれていたが、「薪が生乾きなので、燃えが悪いんですよ」と奥さんは苦笑い。「冬の間、部屋で洗濯物が乾かせるのがうれしいです」とも言った。
竹内さんを取材したのは桜も蕾の3月28日。
春先になって薪の乾燥が間にあわなかったというのはよくあることだ。ぼくも薪ストーブ歴4~5年まではそうだった。
篠山市内は丹波市内より寒い(底冷えする)という話もよく聞かされる。もちろん、その土地の標高差などによっても違うから一概には言えないけれど、丹波市内の我が家(標高130m)では、夜はまだ薪ストーブを焚いている(4月13日現在)。そして薪ストーブ生活9年の経験から、「乾燥十分な薪ストック」もあと2カ月分はある。
竹内さんの家の庭には、やりかけの薪材もたくさん置いてあった。これぐらいの量があれば、薪ストーブ歴6年目となる来冬は余裕しゃくしゃくだろう。 (村長 平野)

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