イノシシ・鹿の生活圏、雨上がりの山にのぼる

今日は、防護柵の点検見回りと日役(山の整備)でまる一日山の中。正味5時間ほどの作業だったが、くたくただ。

朝8時から、防護柵の点検見回りは集落の1~3組が当番で、5人ずつが3班にわかれて柵沿いに歩いた。鉄網が破れていたり、イノシシが網の下に穴を掘っていたり、網の上に倒木が乗っていないかなどを点検しながら、必要があれば補修していく。神出鬼没の彼らは、どこかからかやってくる。彼らを柵の外に追い出したというよりも、「人間が柵のなかに住んでいる」ような有様だ。
 この防護柵が野上野(丹波市春日町野上野)にできたのは7年ほど前、総延長5~6キロはある。たいてい集落に近い山裾に築くのが常識(普通)らしいけれど、少ない予算の関係とかで、尾根に向かう傾斜地に張られた。そのため、山をのぼる「防護柵点検見回り」がシンドイことになった。
集落の14組(208戸)が当番制で年に7~8回見回っており、11月は1~3組の番だった。
ありがたいことに、この日(11月24日)は、年に1回の日役(ひやく)の日にかさなった。そこで、防護柵見回りの人たちは、午前中の日役作業をしなくてすんだのだ。2、3カ所で補修もしたが、山歩きの気楽さで見回る。落ち葉に点々と鹿のフン、イノシシの足跡をみる彼らの生活圏。
 日役作業のほうは時間も長いし、急傾斜地に足を踏ん張ってするからとてもキツイ。普段使わない筋肉を使い、年に1回の作業だからなおさらだ。植林ヒノキの高枝をなぎなたのような長柄ノコギリで伐り落としたり、茂った雑木を伐ったり、間伐したりして、薄暗い植林の日当たりをよくしていく。これをやらないとヒノキ材は立派に育たない。
8年前、この日役作業を初体験したときは新鮮さがあり、けっこう面白かった。しかし3年目、4年目とやっていくうちに、「日役はイヤ」の思いは村の衆と同じになっていった。なにしろキツクて単調な作業なので、時間のすぎるのが遅いのなんのって! 畑作業に精出しているときは、時間も忘れるほど早いのに、1時間が数時間にも感じられる。足元は滑るし首や腕も痛くなる。翌日は脚の筋肉がパンパンだ。
国産木材の値は下落しつづけて山の値打はますます下がるばかり。だから毎年、村の衆たちは「こんな山、もう一銭にもならんわ」とぶつぶつ言いながら山にのぼる。
たとえ木材では金にならない山であっても、先祖から伝わる財産であり、保水や自然景観という点でも大事なことを村の衆は自覚している。日役に出ない人は7000円(高齢者家族・女性家族は半額)を支払うことになっているが、そのお金惜しさだけで作業に出ているわけではないのだ。山村に住む、お付き合い行事の一つである。
防護柵の点検見回りをおえて、焚火にあたっていると、枝落としの作業で怪我人が2人出たと聞いた。足を滑らせころんだ瞬間、鎌で手を切ったという人は病院に運ばれていった。8年間、怪我人が出たという話は聞いていなかったが、前日雨が降ったあとなので今日はなおさら滑りやすかった。
防護柵見回りの3班は、3頭連れのイノシシに遭遇したという。
「こらッと叫んだら、猪突猛進で逃げよった」と笑っていたが、向かってくることもあるというから油断はできない。 
焚火をしていたすぐ近くに、イノシシの頭骸骨がころがっていた。人間たちに追われる身のイノシシやシカにとっても、この山は彼らの生存をかけた生活圏であり、故郷なのだ。