3Sをモットーに

雪が溶けた早春の里山を、愛犬ミッチーを連れて妻と久しぶりに散歩する。少し後ろからボンヤリ歩いていた私を振り返り、妻が言った。
「眉にシワ寄ってるわよ」

妻はよく私のだらしない服装をチェックしてくれるが、同じように「眉のシワ」も点検してくれる。その親切には、「高倉健を意識して歩いているんだ」と応える。もちろん冗談であるが、誰がみても私は無愛想らしい。俗に40歳過ぎたら顔は自己責任と言う。目尻の笑いジワではなく眉にシワができやすいのは、だいぶ損をしていると自覚しているのだが……。
顔を見た印象だけでその人物の食歴や性格や人生までズバリ当てたというGOは、「スマイル・スピード・スマート」の3Sをモットーに、弟子たちにもそれらを厳しく求めた。子どものように破顔大笑したGOスマイルはとくにいいが、スピードというのは記憶力・判断力に基礎をおくものだろう。GOは、その判断力にしても他人からの借り物ではなく、自由自立精神に基づく判断即決断のスピードを求めた。
では、スマートとはどういうことか。
「外見はシックでエレガントで、高貴で、優しく物静かであり、内に毅然たる態度、正義、自由を秘めていることをいう」(『道の原理』
うーん、まいったなぁ。理想的だが完璧すぎて、こういう人はなかなかいない。ある映画のなかの高倉健さんはこれに近いようにも思えるが、無口すぎて眉にシワを寄せるからチョット近寄りがたい。
若かりし頃のGOは女性に相当持てたようだから、シックでダンディであったにちがいない。しかし晩年のGOは「田舎のおっさんみたい」にも見られたようだ。飾り気なく世俗を超越していたからだと想われるし、土臭い百姓スタイルが好きな私としてはこちらのGOのほうが好みではある。
高貴な精神の人は概して飾り気なく、例えばマハトマ・ガンジーのように外見の服装などは超えてしまうものである。GOは『道の原理』にこんなことも書いている。
「武士(もののふ)とは、自然とは何か、世界とは何か、宇宙とは何かを心得ている自由人をいう」
経済主義一辺倒の現代社会ではこういう気骨ある武士顔は生まれにくいが、明治の頃まではずいぶん見られたのだろう。
20年ほど前モンゴル草原を旅したとき、GOも敬服した合気道の開祖・植芝盛平のように威厳ある古武士面(こぶしづら)の遊牧民と出会った感銘は忘れられない。でもこの思い、草食系が好きな今どきの女性には分かってもらえないのだろうなぁ、と独り言。

永遠の少年GO2・平野隆彰「Macrobiotique 2012年6月号」より(日本CI協会発行)
※GOは、桜沢如一の略称