薪ストーブのある暮らし(3)

いちばん安いモデルで手入れも簡単
 丹波は、雪はあまり降らないが底冷えする寒さなので、新築家屋の窓はたいてい二重ガラスになっている。だから古民家を買って移住した人は「冬はまいったぁ!」とよく言う。
 福西夫妻が大阪から丹波市(春日町下三井庄)に移住したのは2011年。


薪をけちって燃やしていたら

 人の縁で紹介された古民家を購入した。引っ越す前から薪ストーブを考えていたが、「ずいぶん高いものだろう」と思ってその冬は見合わせた。ところが丹波の古民家は思いのほか寒かった。
「キッチンの床が薄い合板だったので床下からじんじん冷え込んできた。これはたまらないと思い、薪ストーブを入れるつもりで15ミリのヒノキ板を買ってきて合板の上に敷きました」。ついでに気に入らなかった約10畳のキッチンリビングの壁や天井の漆喰塗りも自分でやった。
ダッチウエストの「エントリーAF244」という機種を選んだのは、「いちばん安いモデルで手入れも簡単なのがいい」という理由から。ストーブ周りだけは自分でやったが、本体とエントツ工事なども含めて40万円也。
そして迎えた2年目の冬。
「小さいストーブですが充分暖かいし、オーブン付きではないけれど目玉焼きぐらいならきれいに焼けますよ。石油ストーブにはない心地よさがあって、リビングから離れられなくなった。でも、まだ薪の確保が十分ではなかったので、薪をけちって燃やしていたら2カ月後、煙がもうもうと部屋中に充満してしまったんです」と福西さんは笑う。
早速「さんたん」の森脇さんに点検してもらったところ、エントツ上部についている鳥除けの金網が煤だらけだった。そのネットを取り除くだけで問題は解決した。
 薪ストーブの燃焼方式は、「エントリーAF244」のような触媒方式(キャタリティック燃焼)と非触媒方式がある。非触媒方式はリーンバーン燃焼とクリーンバーン燃焼とがあり、いずれにしても不完全燃焼にならないように二次燃焼(再燃焼)させて温度を上げる仕組みである。それでも彼のように極端に「薪をけちってしゅぼ、しゅぼ燃やし続け」ていれば、二次燃焼に支障をきたすのかもしれない。
「森脇さんの提案でエントツにも空気調整のダンパーをつけています。空気調整のコツを覚えると炎がオーロラのようにゆらいで、見ていて飽きないですね」
取材したこの日(4月21日)、もう薪は焚いていなかったが、シーズン中は写真のように可愛い盛りの長男(6歳)、長女(2歳)と4人、薪ストーブを囲んで過ごす。

反対していた父親のほうが先に
福西さん(34歳)は、大阪市北区にある会社に通っている。車またはバイクでJR篠山口まで走り、そこから電車で1時間余り。朝6時45分に家を出て、夜は8時頃に帰宅という毎日。
「これなら郊外に住む都会のサラリーマンと変わらない。週末は自然栽培というか放置栽培の野菜づくりをして、都会では楽しめない薪ストーブがあるとまた最高ですよね」
祖父の代に興したシール印刷の会社で、現在は父親が社長というから、いずれ三代目となる。そんな事情もあって、父親は丹波への移住を反対していたが、ゆったりした子育てや自然環境への強い思い入れがある奥さんと二人して押し切った。丹波に4年間通いつめて土地や家の物件を見て回り、「丹波の森公苑で開かれた田舎暮らしファーラムというのにも参加して、赤峰勝人先生の講演にはすごく感動しました」と奥さん。
私は、その講演の発起人の一人だったことを話すと、二人はちょっと驚いていたが、自然志向の若い夫婦が移住してくれるのは「田舎暮らしファーラム」の狙いでもあったから、こちらとしても嬉しい限りだ。
リタイアした熟年夫婦が田舎暮らしを始めて、その子や孫がついてくるという例は多いが、福西さんの場合は逆だった。反対していた彼の父親は、週末遊びにくるようになると丹波が気に入ってしまい、さっそく隣の篠山市に土地を探してログハウスを建てたという。「しかも、ぼくらより先に薪ストーブを入れたんです」
ところで薪の確保はどうしているのか訊ねると、「周りにどんどん知り合いも増えて、薪ストーブ仲間も増えているし」、山の間伐材や畑で使わなくなった杭、木工所の端切れなども分けてもらっているという。
「お風呂も灯油と薪の両方で沸かせるんです」と嬉しそうに言った。風呂も薪で沸かすとなれば相当な量が必要だ。ガレージ扉の横に積んでいた薪束を見せてもらった。
「薪が細いし、この量ならストーブだけでも1カ月と持たないよ」と言うと、
「えー、そんなものですかねぇ……」とちょっと不安げな福西さん。ひと冬乗り切る薪の量を、まだ正確なところが把握できていないようだ。薪ストーブ1年生では無理もないか。
そこで、「もし時間があるなら、これから薪を伐りにいきますか」と誘ったところ、「行きます」と即答。
というわけで、この取材の1時間後に待ち合わせ、NPO丹波里山くらぶが伐採を請け負っている国道175号沿いにある樫の森へと案内。1時間半ほどの作業で軽トラ一杯分の収穫を山分けとした。
あの大震災後、薪ストーブの需要はウナギ登りだそうだが、都会ではタダの薪を手に入れるのがむずかしい(薪代が相当かかる)。こうして薪ストーブ仲間が増え、森林ボランティアの丹波里山くらぶの会員も増えてくれたらありがたい。

■ 情報提供:薪ストーブさんたん  http://www.makistove-santan.jp/

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