幻想と現実のはざまにて候

陽気のいい春の夢
「緊急ニュースをお知らせします。」
この春、阪神タイガースは快進撃なので、ナイターの時刻が近づくとソワソワする。この日もそんな気持でテレビのスイッチを入れたら、いきなりニュースが飛び込んできた。リモコンでサンテレビ(3)を押したつもりが、映るはずがない9チャンネルだった。


お茶漬の水博士が開発したギャグモ

北朝鮮の女性アナウンサーのように怖い顔をしたキャスターがニュースを読みあげているところだった。
――キャスター
今日の未明、5時35分、△△△原子力発電所の上空に突然、円盤が飛来しました。第一発見者となった新聞配達少年によりますと、円盤は瞬く間に原子力ドームの上に接近し、円盤の中から細い糸を伝って巨大なクモがするすると降りてきたそうです。次から次へと降りてくるクモを数えていると、なんと88匹もいたということでした。
そのクモの体長は十数メートルもあり、まるで六本木ヒルズの森タワーの前にある「巨大クモ.・ママン」のようだったそうです。少年は慌てて携帯で写真を何枚も撮ったのですが、なぜかその映像は深い霧が映っているばかりでした。
いまここに映されているテレビ映像は、金色のクモの巣で覆われてしまった原子力発電所です。この△△△原子力発電は、政府の決定により昨日再稼働されたばかりですが、いまは完全にストップしています。関係者らは首をかしげ、黄金色に輝く巨大なクモの織物を遠くから眺めているばかりです。
さっそく宇宙異生物生体科学がご専門の大場鹿屋敷先生にお越しいただいています。先生、この奇跡とも言える現象、どうご覧になりますか?
――大場鹿屋敷博士
これはですねぇ、おそらくですねぇ、あの十万馬力のアトムを発明開発したお茶の水博士のお孫さんに当たる「お茶漬の水博士」が開発されたギャグモの仕業ではないでしょうか。円盤を開発したのち、ヒマラヤの山中に隠遁されたお茶漬の水博士は、私の教え子でもありますが、この地球上から原子力をすべて廃絶することを長年訴えておりました。
博士は、ヒマラヤに残るマンモスの遺伝子を金色の糸を吐きだすコガネグモに注入した上に、放射能のなかでも生きられる微生物の遺伝子を錬金術的に混ぜ合わせたのだろうと想われます。このギャグモは数年前に開発されたと聞いておりましたが、まさかこのような形で現れるとは・・・。
――キャスター
でも、ギャグモの姿は消えてしまったようですが。円盤にもどったのでしょうか?
――大場鹿屋敷博士
いいえ、そうではないでしょう。ギャグモは原子力の燃料をエサとして食べつくすと、クモの糸を吐きだしながら死んでしまうのです。その死骸はばらばらになって純金の砂粒に変身するのです。いま原子力発電所を覆っている黄金の糸も100%の純金ですよ。お金に換えたら300兆円にはなるでしょうねぇ。
――キャスター
まぁ、ゴールドですか。信じられなーい! それは大変! ゴールドラッシュに人々がどっと押し寄せてきますよ。
――大場鹿屋敷博士
いや、それは危険です。ものすごい放射能を帯びた金ですからね。触れたとたん、数時間で死んでしまいます。
――キャスター
じゃ、いったいどうしたらいいんです! 世界の大金持ちになれるチャンスだし、これで国の財政赤字も・・・!
――大場鹿屋敷博士
ほほほッッ・・・。あなた、芥川龍之介の短編小説『蜘蛛の糸』をご存じでしょう。蓮池のそばを歩んでおられたお釈迦さまが、地獄の血の池で苦しむ罪人のカンダタを救ってあげようと、クモの糸を降ろしますね。ところがカンダタが、「こら、罪人ども。この蜘蛛の糸は己のものだぞ。お前たちは一体誰に尋(き)いて、のぼって来た。下りろ。下りろ。」と大声で喚いたとたん、クモの糸はプッツンと切れてしまいますね。それでもって再び地獄の血の池に墜落・・・コワイ話ですね。ナムアミダブツ・・・
――キャスター
あははっ、それは古くさい小説の話でしょ。私もこうしてはいられません。失礼します。この世はすべて金次第、ゴールド、ゴールドよ!

 キャスターがそう言って叫んだところで夢(幻想)が覚めたのだった。
そして現実は・・・。『週刊ポスト』(12年5月4日 号)には、こんな物騒なことが書いてある(小沢一郎と橋本徹「本当の関係」)。以下、抜粋。

「・・・・略。なんと経済産業省中枢が、7月に関西の大停電を目論んでいるという信じ難い情報を掴んだ。
『梅雨が明けて夏を迎えた時、いまの供給見通しでは確実に関西で大規模な電力不足が起きる。関西の有権者は身をもって橋下の原発再稼働反対が無責任で迷惑な主張だと知ることになり、橋下ブームは一気にしぼむだろう』(同省幹部)
言葉こそ慎重だが、大停電を「橋下のせい」と結びつける論理は恐ろしい。実際には電力供給できても、経産省と関西電力が結託すれば、停電や節電を現実にすることは簡単だ」

橋下サンには頑張ってほしいねぇ・・・ガンバレガンバレ、はーしもと!

                                               (村長 平野)