水汲みながら「笑う山々」に笑う

風になり、水になり、土にもなろう 
 毎月2回、水を汲みに行っている。行先は車で25分、丹波市市島町の五台山の麓。「狸穴命水」という石碑が建つ水汲み場では、修業姿の弘法大師の石像が迎えてくれる。お賽銭をちょっとばかり、そしてお礼の合唱。

いつもなら15~20分もしたら、合計60~70リッターのポリタンクは満杯になるが、水量がちょろちょろの日は時間が3倍ほどかかる。今日もそうだった。
最初はじれったいが、のんびり構えるしかない。大晴天で、樹樹をぬける風も心地よい。水がポリタンクに溜まるのをじっと待ちながら、俳句の季語「山笑う」を想い、朝崎郁恵の「阿母(あんま)」を想い、駄句を浮かべている。

雲ひとつない大空は光かがやき
トンビやカラスが風まかせに泳いでいる
とうとうと流れる川に一羽のしらさぎが瞑想する
水がはられた田んぼのあちらこちらでは
カエルの大合唱コンクール
その会場を飾る赤白のれんげ草も満開だ
畦道のタンポポは黄色の鮮やかさを競い咲き
草という草はいきおいよく音をたてて背伸びする
遠くの連なる山を見れば新緑まぶしく
山全体が幼児のごとく朗らかに笑っている
それなのに人はなぜ苦しみ、悲しみ、怒り
過去を悔み、未来を心配するのか
なぜいま、笑う山々を見ようとしないのか
「蕾をつけた樹樹のなかには
幾千もの夏が秘められている」というのに
やがて来る幾千もの夏を想いながら
やがて去る幾千もの秋を想いながら
ぼくはいま風になり、水になり、土にもなろう
そして、笑う山をみて笑おう
今しかないこの時を

あ~あ・・これでは歌える「歌詞」にならんなぁ。

幾千もの夏が秘められている
NHK新日本風土記の主題歌をうたう朝崎郁恵が、奄美島なまりの哀調こもる渋声で唄いあげる「阿母」。その歌詞以上に唄心は深く祈りこめられ、泣けるほど素晴らしい。(作詞:UA 作曲:吉俣良 編曲:高橋全)。


夏はかけ足で 無常に過ぎてゆく
時はつかまらず ここまで流れつき

雪の降る日も 道無き夜も
この手を放さずにあなたは微笑んだ

出逢う喜びと 叶わぬ悲しみと
夢はいつまでも歌に宿りゅん

蕾をつけた樹樹のなかには
幾千もの夏が秘められている

種が育つために 流れる涙
あの海にかえるまで 枯れることはなく

時計草の花が 静かに開きだす
でいごにもたれて あなたとうたたね

とくに「幾千もの夏が秘められている」というところと、続く歌詞にいつも鼻腔がジーンとくる。
先月末に出逢った版画家の幻一(まぼろし はじめ)さんは、奄美ふるさと人応援団の一人。たしかこの夏、奄美に行くと言っていた。同行させていただこうかなぁ。