新規就農者の厳しい現状

丹波市有機農業研究会(丹有研)の1月の定例会で、既存の有機農業ワークキャンプが新規就農者誘致に実績を上げていると評価されて、今後はもっと強化しようという意見が出た。丹有研では丹波市に新規就農者を多く迎えることを目標にする方針になりそうだ。

丹波市有機農業研究会の方針



丹波市有機農業研究会(丹有研)の1月の定例会で、既存の有機農業ワークキャンプが新規就農者誘致に実績を上げていると評価されて、今後はもっと強化しようという意見が出た。丹有研では丹波市に新規就農者を多く迎えることを目標にする方針になりそうだ。

市島有機農業ワークキャンプは都会の人を対象に3泊4日で受け入れ、日中は農作業を手伝ってもらい、夜は生産者が有機農業の話しをすることで体験と学習を通じて有機農業のことを学んでもらうプログラムだ。始まりはかなり古く、一色さんも以前生産会員だった君塚さんもこのプログラムがきっかけで奥さんと知り合いになった。以前は学生青年センターが企画していたが、プログラムもマンネリ化し一時期中断、その後市島に新たに定着した就農者が中心になって3年前から再開することになった。

市島有機農業ワークキャンプへの参加者は少なく7-8名程度であるが、以前に比べて参加者の中から実際に農業者として市島に定着する人が多くなっている。一昨年の参加者では谷水くんの他、土井さんも家族で市島に引っ越してきて就農し、山田くんもついに勤めを辞め丹波太郎の2階に住んで就農の準備にかかっている。去年の参加者、岩本さんは家族で引っ越すべく、これも丹波太郎に住みながら空き家を捜しているそうだ。



農地の衰退は加速一途



皆、さまざまな経歴を経て市島にたどりついている。うちに農業研修に来ている谷水大祐くんは一昨年9月にあった市島有機農業ワークキャンプの参加者だ。彼は11月にG90のキャンペーンに漬物を持って参加したのだが、その後、消費者が漬物の取り扱いを検討してもらっているそうで大変ありがたい。谷水くんは兵庫区の出身で、筑波大学卒業後コーヒーメーカーに就職し、サラリーマンを数年経験したが、震災をきっかけに自分の生き方に深く考えるところがあり、備前焼の焼き物師をめざした。その後、農業との出会いがあり市島で有機農業をすることを決断し越して来た。日本の伝統的なものが好きなことに加えてもともと漬物とご飯が好きなので、野菜を作るのなら漬物加工もしたいと考え、東大阪の「漬物道場」に通いプロから漬物加工を習った。氷上町の吉家さん(長年大阪で無添加漬物の製造をされていた方)のところへも出入りし現在も指導をうけている。39歳、まだ独身であるがやる気満々。どうにか成功してほしい。

谷水くんのような若者が農村に引越してくるのはごくまれで、市島に多くの若者が就農してくるのは皆、市島が有機農業の町だからだ。日本の農村の高齢化は平成15年度の調査で65歳以上の高齢者が30.8%を占め、全国平均を19%も大きく上回っている。農業人口では65歳以上の人口が56.1%で農業者の半分以上が高齢者である。後継者不足で毎年、市島でも遊休地が増え、いくら若者が定着してもおっつかないスピードで農地が衰退している。



国勢調査での統計



2000年の国勢調査では35歳から39歳の農業に従事する男性の未婚率が31.1%でこれは全国平均を大幅に上回っており、農家の嫁不足は深刻である。つまり、農村では高齢化が急激に進み農業者が減少し、しかもわずかに残った農業後継者には収入があっても嫁が来ないという最悪の状況にあるわけだ。

このきびしい農村の状況中であえて勇気を持って農村にやってくる新規就農者は一筋の光明である。全国調査では新規就農者は平成元年(私が就農した年)では全国でわずか66名であったのに対し平成13年には530名に増加している。しかし、農村の人口が減少するにはさまざまな要因があるわけで、地元に何のつてもない若者が農村に生き抜いていくことは地元に住むもの以上に大変だ。それは私自身の体験からの実感している。

平成13年度農林水産省が行った新規就農者対象の調査によると新規就農者が就農後、困っていることは、

第1位が「所得が少ない」(59%)

第2位が「栽培技術が未熟」(44.5%)

以下、「労働不足」(35.5%)、「営農資金が少ない」(29.3%)

「販売が思うようにいかない」(29.3%)

「経営規模が小さい」(28.5%)であった。



所得300万円以下が80%以上



平成14年に行った調査では今後1年間農業によって見込まれる所得が年収200万円未満で66.1%、200万―300万が21.1%で、所得300万円以下が87.1%もあることがわかった。

平成13年度の全国新規就農相談センターの調査でも農業所得で生活が成り立っているのがわずか26%。また、生活面の悩みでは「思うように休暇がとれない」(29.3%)、「健康上の不安(労働がきつい)」(14.3%)、「就農地に友人が少ない(地元と人と合わない)」(14.3%)、「集落での人間関係」(11.6%)、「村の付き合い等、誘いが多い」(11.4%)、「集落の慣行」(10.8%)。元々、新規就農者は自ら困難であることを覚悟した上で農村に入ってきたわけだが、現況としていかに生活面でも経営面でも苦労しているかが調査からうかがえる。



それでも皆、たくましく生きている



市島町有機農業研究会が設立され、有機農業という農業の理想をめざして出発したことは多くの若者を市島に集める大きなきっかけとなった。私自身も20年前新規就農者として引越してきた。それから大谷さんが続いた、今や市有研の代表だ。

8年前にうちの研修生だった井上くんはまだ独身であるが宅配の消費者会員が毎週40-50件あり、たくましく生きている。5年前の研修生古谷夫婦はブルーベリー農園を始めJASの認証を受けた。

うちの研修生以外でも平飼い養鶏をやっている越前さん、インドネシアで家具販売をしていた橋本高穂さん、農学部を勉強し、車のセールスマンから一転、就農した宮崎くん。他、実は市島には今や私も名前も顔も知らない就農者が10数人いるようだ。一方で有機農業をめざしたものの別の道を見つけ歩んでいる池内さん、丹波太郎の職員になった君塚さん、とりあえず農業から離れ丹波市内の農業機械会社に勤める寄田くん、警備会社で働く平田くん。体調不良で一旦離農し再度和歌山で就農した石崎夫婦。

残念ながら脳溢血で倒れた西村さん。こんなにきびしく、苦しくとも農村での生活にチャレンジする新規就農者、本当に皆希望がかなって幸福になってほしい。



(市有研便り 2009年1月号より)