祖国愛

リオ五輪が始まった。気になるのは、やはり日本人選手の活躍。日本人選手が出場すると応援に力が入るし、

メダルを取れば素直にうれしい。この歓喜の感情は何に根差しているのか。愛国心だろうか。▼46年前、市ヶ谷自衛隊駐屯地で自決した三島由紀夫は、「愛国心とは、国境を以て閉ざされた愛」として、「実は私は『愛国心』という言葉があまり好きではない」と吐露している。「では、どういう言葉が好きなのかときかれると、私は去就に迷う」とした三島だが、数学者でエッセイストの藤原正彦氏は「祖国愛」という言葉を愛国心に対置させる。▼祖国愛は家族愛や郷土愛の延長にあるもので、祖国の文化や伝統、自然などに誇りを持ち、これらをこよなく愛する精神とする。英語では、愛国心にあたるものに、自国の国益ばかりを追求するナショナリズムと、祖国愛をいうパトリオティズムがあり、はっきり区別しているそうだ。▼五輪での日本人選手の活躍に快哉を叫ぶのはナショナリズムからではなく、祖国愛の発露だと信じたい。▼日本を愛すると公言し、日露戦争に断固反対した思想家の内村鑑三はまさに祖国愛の人だったが、日本ではナショナリズムと祖国愛との区別がつかず、悲劇を招いた歴史があった。リオ五輪の開会期間中に終戦記念日がある。(Y)


丹波新聞(コラム「丹波春秋」より)2016年08月07日