出版「おぉ、丹波よ! TAMBA」

24の手のひらの宇宙・著
丹波市商工会/編  丹波新聞社/企画制作

早くも春一番の風が吹いて十日余り。
つい昨日のことである。風はなく曇り空だった。庭で薪割りをしていると、ピーヒョロロ~、ピーヒョロロ~、ピーヒョロロ~、トンビがしきりに鳴いていた。手を休めて山のほうを見たが、姿が見えない。目線を巡らしていると、なんと頭の真上で旋回しているではないか。おどろいたことに五羽や六羽どころではない。直径わずか二百メートルほどの空間に、十八、十九、二十、……、あれ? おぉ! 遠く空高く舞い上がったのも数えると三十羽ほど飛んでいるではないか。
トンビを見るのは珍しくもないけれど、こんなに群れたのを見るは初めてである。飛ぶというより翼を広げたまま気流に舞っている。ピーヒョロロ~、ピーヒョロロ~、恋の歌でもうたっているのか。歌声に合わせたように上昇したり下降したり、クルリクルリと美しい曲線を描く。なかには踊りの名取もいるらしい、えも言われぬ優美な舞だ。「いいなぁ、その宇宙も……」首が痛くなるほど見惚れているうちに、ふと口をついて出た。
「おぉ、丹波よ! TAMBA」

昨年秋、本書の企画が持ち上がったとき、このタイトルを提案させてもらった。一瞬、「??」
という反応はあるが、異論を唱える人はいなかった。
丹波に移住して十二年、私は「丹波は極楽です」と都会の人たちには言い続けている。その思いが一人で何かに感動したとき、「おぉ、丹波よ」というつぶやきになる。おそらく丹波に暮らす人々の大半が、季節の折々に、ふとしたことで、この言葉をつぶやいているにちがいない。丹波は理屈抜きにそんなところ、良き故郷、好き里山なのである。本書の執筆者24人の人生経験や思い(手のひらの宇宙)は多種多彩であっても、「おぉ、丹波よ」の想いは共有されておられることだろう。

書名はあっさりと決まったが、表紙デザインを考えるのは難しかった。あまり具象的にはしたくないし、かといって抽象的すぎるのもどうかと。そんなある日、古民家で開かれた展示会で木工作家・乾善弘さんの「時計」を見た。その瞬間、これで行こうと決めた。そして背景には丹波布を配そうと、本書に執筆されている村山誠子さんの作品を使わせていただいた。
木工時計は丹波らしいゆったりとした手作りのアナログ自然時間を、丹波布は経糸・緯糸でこつこつと積み重ねてきた人生(歴史)時間を象徴している(そう見てほしい)。なお、現物の時計は丈が1メートルほどあり、丹波布にしても色は実際とは異なる。いずれもデザイン上の処理をさせていただいたことをここにお断りしておきたい。

末尾になりますが、24人の執筆者の皆様、丹波市商工会職員の皆様、乾さんと村山さん、そして丹波新聞社スタッフのご協力にも、発行人として厚くお礼申し上げます。

平成二十八年  梅のほころぶ日に
あうん社 平野智照(田舎元気本舗 村長)

                              (「あとがき」より)