プラムにかぶりつき、縄文火の神を祀る朝

庭のプラムが色づいて食べごろになった。朝起きがけに何個かもぎながらガブリ、ガブリとかぶりつく。食べる、というよりかぶりつく、この醍醐味。

適度な甘さとすっぱさが口にひろがり、ぼーっとした頭をさましてくれる。

このプラムの大木を初めて見る人は鈴成り状態に驚くが、今年は例年より実の数は少ないようだ(それでも千個ほどあるか?)。その分、実が一回り大きい。歯の数が半分なくなった隣人のカズさんが草刈の手を休めて庭に入り、赤い柔らかそうな実をとっては「ようやく熟れたな。わしの歯でもいける。うまい」と言いながら齧っている。
「舐めたりして齧るんじゃないよ、こうやって、一気に前歯でかぶりつくんや」
「また歯の悪いわしを苛めおって、アハハ」
「いま3個食べて、お持ち帰りが5個ですか。おおきに。800円つけておきます」
「アハハ、おおきに。わしが棺桶に入るまでツケにしといてんか、アハハ」
こんな対話のやりとりも例年の儀式のような風景である。
時間があれば集落内を歩き回り、誰とでも大声で笑いながら話すカズさんを、私は「油売り」とあだ名づけている。ときどき(疲れているときなど)「耳にうるさい」と感じるが憎めない愛嬌者だ。

今日は、朝から畑の草刈を予定していたが、昨夜は夜中に何度か起きて、睡眠も浅かったせいかプラムを何個もかじっても身体がしゃきっとしない。この数日の疲れがとれないので、無理はしないようにと自分に言い聞かせ、朝風呂(腰湯)に入る。

昨日(6月19日)は待ちに待った縄文空楽窯の“初窯”。朝9時、妹尾さんとともに初火入れ・・・。が案の定、点火がうまくいかない。
窯の購入先(豊土焼きの長岡さん)に電話して「点火や温度調整のコツ」を何度か聞きながら、夕方までにどうにか「素焼き」を終えた。途中から長岡さんがお神酒をもってかけつけてくれて、初めて気づいた。縄文の火の神を祀り、塩や酒、榊などを供え、火入れ式をしていなかったことを。それほど余裕がなかったのだなぁ。

前日(18日)は、岡山県真庭市勝山町の染色家・加納容子さんのお店(ひのき草木染織工房)を訪ねた。ここはかつて出雲街道の宿場町で、街並み保存地区に指定されている。彼女は200軒以上の店や民家をオリジナルデザインの「のれん」で飾ることで街を活気づけた。その「のれんも看板の一つ」ということで取材に行ったのだが、職人としてのプライドと謙虚さを持つ彼女の話を聞きながら、作品づくりの思い、伝統技術の保存、職人(人材)の養成のことなど、日ごろ南部白雲さん(富山県井波町の木彫刻師)が言っていることとまったく同じだなぁと何度となく思い、そのことを彼女にも伝えたのだった。

この取材の帰りしな、遠回りになるが、宍粟市千種町の今井農場にも立ち寄った。この日はちょうど東京から雑誌(ログハウスの本)の取材があるとか言っていたが、私は5時過ぎに着いたので、ちょうど取材が済んだとき。朝から降り続いていた梅雨が止んでいた。
大阪の学校の教師を辞めて千種に移住した今井和夫さんは、家を自分で建てるところから始めて、平飼での養鶏に取組み、今年で27年目になる。標高400メートルの棚田風景のなかにあるその家も見せてもらい、鶏舎にも案内された。1200羽の鶏、すべて国産の食材で手作りの飼料をつくるのに早朝から始めて半日かかるという。鶏舎も自分で建て、アルバイトしながら(奥さんは英語を教え)、3年がかりでどうにか軌道に乗せたが、「若かったから出来たんやね。この年になっていまからやれと言ってもムリ」。と言いながら、最近は廃鶏も自分で肉にして販売するようになったというからスゴイ。やるならここまでやらんとね。しかし、こだわりの養鶏一本で娘3人を育てたことも立派だが、気が遠くなるような思いがした。「病気にもなれないね」と言うと、「そうやね、朝起きれないのは二日酔いになったときくらいかな」と言って笑っていた。
この日の「食事当番」を気にしながら、8時半過ぎに帰宅、走行距離は430㎞。さっそく米を炊き、1個100円のたまごかけご飯を2杯流し込む。絶妙、うまい!
今井和夫さんのこと、加納容子さんのことも語り出せばキリがないので、詳しくはお二人のホームページをどうぞ。

今井農場(今井和夫さん)
ひのき草木染織工房(加納容子さん)

窯の本焼きの前に、来週24日(水)には、陶芸サークルのメンバー10人程が我が家に来てバーベキューをする。そのとき初めてこの窯を披露する。サークルの代表者・妹尾さんとは「サプライズにしよう」ということで、誰にも話していないが、はてさて皆どんな反応があるのやら楽しみである。
プラムをかぶりついたせいかどうか、今朝ふと思いついた。
数十年前?、どこかの土産やで買った縄文土器を窯の上に、「縄文火の神」として祀ることを。  
さて、これを書きながらも疲労感が抜けないが、昼から3日ぶりに空が晴れてきたし、じゃがいも堀と草刈でもするとしようか・・・。(2015.6.20)村長 平野