モンスーンアジア諸国の棚田の耕作放棄と崩壊  辻井博

1、フィリピン世界遺産のバタッド棚田
私と京大同窓生の法貴さん、それからフィリピン稻作研究所のレネ氏の3人と地元の農家の案内で、3月下旬フィリピン・コルディレラ地域のバタッド棚田を歩いた。

下の田と最高30mほど標高差がある急傾斜の石造りの高い法面の上の石と粘土の細い畦道を、滑り落ちるかもしれない強い恐怖と戦いながら、何時間もである。
バタッドの棚田はフィリピンの世界遺産であるコルディレラ地域の棚田群の一つで、海抜1100mにある。バタッド棚田の入り口はバタッド棚田の上辺部に近い高さにあって、同棚田が良く見渡せる。
写真(1)に見るように、バタッド棚田はローマ円形劇場のように配置されており、それが集落に入ったところで急に目に入ってくるから、それは大きな感動でありまた日本人にとっては拡大された美しい「ふるさと」の景色である。円形劇場の底と集落の入り口の部分などに少数のイフガオ族の高床農家やロッジがある。

次に驚くことは、棚田の法面が全て石造りになっており、最上部の棚田から最下部の棚田まで130段ほどあることである。南米のマチュピチュの棚田版と言えよう。しかし詳しく見てみると、この棚田のほぼ30%が、耕作放棄されていたり崩壊していることが分かる。これはかなり大きな割合である。写真ではあまりはっきりしないが、棚田斜面の所々で雑草が茂っているところがその場所である。
高い石造りの棚田の端の狭い粘土と石作りの畦道を歩くのは怖かったが、棚田を下から上まで130段ほど歩いたから、村の入り口からとは全く違う景観や事実が分かった。
先ず畦から下の棚田を見ると、石の法面が急で足が震えるほど高いことである。

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手のひらの宇宙「食と農と里山Vol.1」より
(あうん社 2014年11月11日発行)