草木は春とともに蘇り・・・

昨日までは5分咲きだった庭の梅の花が
いつのまにか満開になっている。

庭の木々は芽吹き、桜の蕾もふくらみかけていた。
遅い春がようやく訪れたらしい。

夜になってもいつもの底冷えの寒さはない。
グラスに酒を注いで庭に出る。
舞台のスポットのように外灯に浮かぶ華やかな梅を見ていると
ふと頭のなかに思いがけない言葉が降ってきた。

「生まれてこのかたずっと死ぬことを考えていた」
というフレーズが、
インディアンの古老が言ったという
「今日は死ぬのにもってこいの日だ」という言葉とともに。

だが、生まれてこのかた自殺したいと思ったこともないし、
議論の余地もなく、
何はともあれ自殺は否定する。
そして思い出すのは、30歳そこそこで自殺した友のことだ。
彼が生きていたら、この満開の梅を眺めて酒を酌み交わしたかった。

満開の梅の木の下で
才能豊かな君の手のひらの宇宙について聞きたかった。
ぼそぼそと小さな声で語る君の哲学を。

草木は春とともに蘇り、
忘れかけていた死者たちもこの世に蘇る。
そういえば、もうすぐ春のお彼岸だ。
空太