家庭料理の「人気番付」で江戸のナンバー1は?

江戸という大都市に住んでいた庶民の味といえば、なにがあげられるだろうか。

いわゆる「寿司」「てんぷら」「そば」「蒲焼き」という江戸前料理として名高いのは、外食の味である。家庭ではどんなものが好まれていたのか気になるところだ。
『日々徳用倹約料理角力番附』(ひびとくようけんやくりょうりすもうばんづけ)という、家庭料理の人気度をすもうの番付になぞらえた表がある。その名のとおり、倹約を旨としている料理が記載されている。
それによると、人気度ナンバー1は、魚類では「メザシイワシ」、豆・野菜料理では「八杯豆腐」が両大関とある(当時のすもうの最高位は大関)。略。
人気一番の「メザシイワシ」は、干し物をさす。いっぽうで、生のイワシの塩焼きとなると、ぐっとランクが下がってしまう。
魚料理では、アサリやハマグリをむき身にし、切り干し大根といっしょに煮た「むきみ切りぼし」。さらに「芝エビ辛炒り」、「まぐろ辛汁」「コハダ大根」「タタミイワシ」といった名が連なっている。
大久保氏の同著(『江戸っ子は何を食べていたか』)によると、「まぐろ辛汁」とは、マクロを具にした味噌汁のこと。もっとも、当時は、前述のとおり、マクロといえばあまり人気がなく、値段も安い手ごろな魚だった。そのためか、倹約するならマクロがいいとすすめられるほどである。
豆・野菜の惣菜では、「こぶ油揚げ」「きんぴらごぼう」「煮豆」「焼豆腐煮」「ひじき白和え」「切り干し煮つけ」「芋がら油揚げ」「小松菜のおひたし」が並ぶ。きんぴらごぼうやひじき、白和え、おひたしなど、いまと変わらない定番の惣菜が顔をそろえている。
ちなみに、漬物や味噌漬け、日光唐がらしなどのご飯の友は、行事や世話役になぞらえられており、おかず番付表には入っていない。(『江戸の食卓』より)

『江戸の食卓』歴史の謎を探る会編 夢文庫(河出書房新社)

コメント:副題に「おいしすぎる雑学知識」とあるように、雑学としての切口がなかなか面白い本だ。マグロは安かったが人気がなかったとは意外。いずれにしろ「江戸の食卓」事情や食文化・食習慣などは形を変えながら現代社会に連綿とつながっていることがわかる。