「今、私たちにできること 〜東日本大震災と原発事故〜」

振津かつみ先生講演会(6月13日 原発問題の学習会)   

ついに静岡のお茶まで

 まったく終息しない原発問題。放射能の拡散していくなかで、ついに静岡のお茶まで汚染されていることがわかった。しかも基準値を超えるお茶は有機栽培のものであった。考えてみると、チェルノブイリの時もかなり広範囲に汚染が広がっている。風向きによっては関西にも影響があるのか心配だ。今のところ、兵庫県の農産物調査でも関西での空気中の放射線にも問題はないようだ。和歌山、奈良でもお茶の放射能検査があり、放射能物質検出は微量にでている。
 そんな中、こちら丹波でもピース丹波という市民団体が中心になって原発問題の学習会が6月13日開催され出席してきた。会場には市島からの教育関係者(保育園園長)など大勢の参加者がいた。

25年過ぎても問題は収束していない
 講師の振津かつみ先生は西宮在住の臨床医で、若い頃から広島、長崎の被爆者の健康管理にかかわってこられた。チェルノブイリ原発事故被災者支援など、ボランティア活動にも従事し、チェルノブイリ20周年のツアーにも参加、現地に滞在し、原発事故の実態を調査された。
彼女のグループ(「チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西」)が支援してきたベラルーシのチェルノブイリ被災地、クラスポーリエ地区は原発から250キロも離れているが、事故以降、地区の3分の1が高濃度に汚染され、人口が半減してしまった。
25年過ぎた現在でも、牛乳の0.5%、森の木の実の92%、きのこの58%、野生動物の25%から汚染物質が検出されており、今も問題は収束していない。
同地区の小児科医によると「事故前はベラルーシで小児甲状腺癌はたった9例であったが2005年には800例以上、発病率は80倍以上に達している」。しかも「クラスポーリエでは近年、子供たちの一般疾病の発病率はやや増加。貧血、慢性疾患、泌尿器疾患、先天的発育障害が増加」、「同様の傾向は成人にもみられ、死亡率は増加、寿命は低下」しているそうだ。

 45%の子供から甲状腺被爆の可能性が高い
 一部の日本の研究者は、放射能の明確な影響はチェルノブイリでも見られないとマスコミ当で発言されているが、振津先生からすると「非常に憤り」を感じられるそうである。
現地では14歳以下の甲状腺癌の発生は1995年、1996年、1997年をピークに減少傾向にあるが、逆に15歳から20歳では2000年から増加傾向にある。放射能の影響はかなり長期にわたることがわかってきている。
7月5日の東京新聞によると福島県のいわき市、川俣市、飯館村で0歳児から15歳児、1810人を対象に放射線被爆調査を実施、45%の子供から甲状腺被爆の可能性が高いことがわかった。
市民団体の調査でも福島市の子供の尿10検体からセシウムが検出されている。また、現地を訪れた医者から福島の避難所で鼻血、下痢、倦怠感など長崎・広島の被爆者に類似した症状が増加しているという報告もある。一体、これからどうなっていくのであろうか。

思いっきり遊ばせてあげたい
  振津先生はチェルノブイリに1週間滞在し家庭にホームステイされた。帰国直前に体内の被ばく量を測ったらセシウムの蓄積が高まったことがわかった。しかし、帰国後3ヶ月すぎるとセシウムも対外に排出され半分になったことがわかった。
   現在、福島にいる子供たちも汚染地域から離れると、蓄積量を減らすことができる。それより何よりも、屋内で遊ばざるおえない子供たちの姿は不憫で、できれば関西で一時的でもいいから福島の子供たちを受け入れ、夏休キャンプなどを企画し屋外で思いっきり遊ばせてあげたいので協力して欲しいと訴えておられた。

 有機農業認定者の数は全国5位の福島県
 先生は福島の被災地にも行かれ、現地の実態調査をされている。福島の農家にもお邪魔し、ハウスでも放射線測量を実施された。農家の家の中でも2.7マイクロシーベルト(0.114マイクロシーベルト/時以上あると年間で国際基準の?ミリシーベルトを超えてしまう。)計測され、放射能の影響がないと思われるハウス内の土壌近くで2マイクロシーベルト、腰の高さで5マイクロシーベルト、頭の高さで7マイクロシーベルトを計測した。ハウスでは放射性物質が雨で落ちてきても土に染み込むことはないが、ハウスの屋根の部分に放射性物質がたまっているのでハウスの上空で高い放射線が計測されるわけだ。農作物の放射能の濃度が低くても、そこで働く農家は上空から高濃度の放射線を浴びることになってしまう。
福島では避難地域外にまだ多くの農家がいて、日々、農業に勤しんでいる。特に福島県は有機農業にも力を入れてきており、平成18年には農業総合センターに有機農業推進室が新設、「ふくしま型有機栽培産地づくり推進事業」を実施、県自らが有機JASの登録認定機関となり、有機農業生産者を育成してきた。
平成15年では有機JAS認定農業者がわずか24名で全国24位であったものが、平成20年には83名の有機農業認定者がいる全国5位の有機農業の産地である。作付面積も平成16年度から1,7倍の234ヘクタールにも拡大してきた。ここに原発事故が起こったわけだ。

 「福島県の有機農業者の現状を聞く」集会
 6月18日、全国有機農業推進協議会主催で「福島県の有機農業者の現状を聞く」と題して、東京で集会が開催された。その時の様子はインターネットの動画でも見ることができる。
現状の報告は全有協の理事であり、福島有機農業ネットワークの事務局の長谷川氏、南相馬市の生産者、安川氏と根本氏、二本松の生産者、菅野氏、福島市の生産者、岩井氏から現状報告があり、大地を守る会、生協パルシステム、IFOAMジャパンから支援状況についての報告があった。
有機農業生産者の姿勢はどの地域でも同じだ。長い間、農薬・化学肥料を使わず、堆肥を入れ続け、土作りを実施してきた。原発事故によって、せっかく準備していた作業は中止させられた。南相馬市の生産者は稲作の準備が進んでいた。二本松の生産者は馬齢薯を植えようとしていたができなくなった。
福島第一原発の事故が起きた時、福島市の生産者のもみの温とう処理を仲間としていた。事故後、行政から作付けを差し控えるように指導がきた。原発近くの生協に出荷している養鶏家は事故が起こった時、理由も知らされないままバスで避難させられた。何も持たず着の身着のままで理由もわからず移送された。後で、原発事故の事を知ったが、もう2度と鶏舎に帰ることはできなかった。鶏はすぐに水不足で全部死んだ。

 7000戸の稲作農家の作付けは禁止
 4月12日、国は土壌基準を5000ベクレム以内とし、それ以上が計測された水田1万ヘクタール、7000戸の稲作農家の作付けは禁止された。南相馬市、二本松、福島市では5000ベクレムを下回り、作付けは開始することができることになった。二本松の菅野氏周辺の圃場では?000−4000ベクレムの放射能が土から検出されている。菅野氏の圃場は4511ベクレムを計測したところもあったが国の基準を下回ったので耕作可能になった。予測では圃場で4511ベクレムあるとその10%である451ベクレムが農産物に蓄積することになる。
二本松では現在でも年間にして1,8-9.9ミリシーベルトが計測されている。本人も周辺を計測したら畑で0.1ミリシーベルト、ハウスで0.8ミリシーベルト、苗を洗う河川に近づくと6ミリシーベルトに上昇するそうだ。
福島市の岩井氏の圃場は2650ベクレム計測された。これも国の基準を下回り耕作可能となった。福島の有機農家は、国の基準を下回っているので安全であり、福島の農産物は風評被害を受けているだけだと主張する。復興には消費者の協力が必要であり、理解してほしいというものだった。

 日本は世界の300倍の基準
 国の放射能基準は今年の3月17日に改定されている。基準は国際基準や各国の基準と比較してかなり高いものになっている。
3月17日まで日本の放射能摂取許容量はヨウ素131、セシウム134は10ベクレム/キロであったが、17日以降、ヨウ素で300ベクレム、セシウム137で200ベクレムにあがった。
現在、日本国の基準は牛乳が300ベクレム、葉物で2000ベクレム、その他野菜、500ベクレム、穀類500ベクレム、肉・卵・魚貝類500ベクレムになっている。
WHOの食品一般基準は10ベクレム、原発被災国ベラルーシでも野菜の基準は100ベクレム、米国の基準は170ベクレムである。飲料水のWHO基準は?ベクレム、米国0.1ベクレム、ウクライナで2ベクレムなのに、日本の飲料水基準は300ベクレム(ヨウ素)、なんと世界の300倍の基準なのだ。

 チェルノブイリでは耕作不能地域に該当する
 チェルノブイリ周辺には土壌基準もあり、473ベクレムを越えると耕作不能地となり農作物の生産が禁止される。日本の基準は5000ベクレムなのだ。ちなみに福島県内の土壌調査では南相馬市で78001042ベクレム、いわき市の一部で488ベクレム、福島市で1896ベクレム02245ベクレム、二本松で1952ベクレム計測されている。ここはチェルノブイリでは耕作不能地域に指定される。
福島には長谷川氏を含め、日有研の仲間が大勢、有機農業に従事している。震災や原発事故から立ち直ろうと必死にがんばっている。東北の漁師さんも復興に向かう姿がテレビでも出てきて応援したいと思うが、原発から流れた放射能の影響はどうなのか?考えれば考えるほど、どうにもならないこの現実。原発は恐ろしい、農業者、漁民、第一次産業に従事する人間にとって本当に脅威である。