竹をこよなく愛した北宋の画家

「胸中に成竹あり」 で、 竹を描こうとする前に、 心の中には竹の形ができあがっていた。



タケノコが大の好物の当方。 毎日のようにタケノコ料理に舌鼓を打っている。 旬のおいしさが味わえるのは今の時期だけかと思うと、 いっそういとおしく、 普段は見向きもしない竹林のありがたさを思う。 ▼竹にまつわる中国の言葉に、 「胸中に成竹 (せいちく) あり」 というのがある。 成算があることの形容だが、 この言葉は竹を描くことを得意とした北宋の画家、 文同に由来する。 文同の竹の絵は天下一品で、 求める人が引きも切らなかった。 ▼とはいえ、 その絵には特別な工夫はなく、 さらさらと描いたという。 ただ文同が他の画家と決定的に違ったのは、 竹をこよなく愛したことだ。 厳冬であれ、 炎暑であれ、 暇さえあれば竹林に入って竹を熱心に観察した。 竹の姿や変化について知り尽くした。 ▼だからこそ「胸中に成竹あり」 で、 竹を描こうとする前に、 心の中には竹の形ができあがっていた。 不断の積み重ねの大切さを教えてくれる故事だ。 不断の積み重ねがあってこそ、「胸中に成竹」 の域に達することができる。 これは何も絵に限ったことではなく、 万事に通用するものだろう。 ▼このコラム一つにしても、 そうだ。 知識を深め、 感覚を磨くことを怠ると、 駄文に堕す。 タケノコの時期にしか、 竹に思いを馳せないような気まぐれな態度では、 胸中に竹が描けない。 ―自戒。 (Y)
丹波新聞(丹波春秋)より 2014年04月27日