"森の声 "聴く同志で起業

Iターンの能口秀一さん(41)と、Uターンの安田哲也さん(36)。ふたりは出会うべくして出会い、「有限会社ウッズ」を立ち上げた。
能口秀一さん、安田哲也さん  丹波市氷上町常楽



どんな仕事でもやる気になれば適応できる



Iターンの能口秀一さん(41)と、Uターンの安田哲也さん(36)。ふたりは出会うべくして出会い、「有限会社ウッズ」を立ち上げた。



宝塚出身の能口さんは、大学時代から撮影スタジオでアルバイトをしていた。卒業後も京都でカメラマンの仕事をしていたが、一九九四年の夏、氷上町に移住した。二十九歳、結婚して子どももいた。



「とにかく田舎で暮らしたかった。全国のどこでも、山でも海でも、漁師になってもよかった」というから大変な覚悟である。



「職業をしぼると場所を選べないし、田舎に住めない。どんな仕事でもやる気になれば適応できます」



求人紙を見て、春日町にあるO製材所に就職が決まると、すぐ町内のアパートに引っ越した(六年後、現在の中古物件を購入)。まったく畑違いの仕事だが、三年目には工場長となり、営業で工務店回り、買い付けで各地の木材市場に行くようになった。

「二年目には木材市場に買いに行かされた。セリの売買だから瞬時に決断しないと買えない。コーフンしましたね」



原木は製材してみないとわからない。いわゆる「目利き」でないと大損したりする。「自分が信じて買った原木がその通りに製材できると面白い」という。



一方、氷上町出身の安田さんは一級建築士。大学卒業後は京都で三年、地元に帰って西脇市の設計事務所で四年はたらいた。独立しようとしたが、「このままでは何か物足りなくて」、青年海外協力隊としてアフリカのジンバブエに二年間。



帰国後も「神戸あたりに出るべきかどうか迷った」が、実家を事務所に独立開業。

「林業があり木材建築のニーズはあるのに、設計者が最初から関わることが少ない」

創造的な仕事をしたい安田さんの「もやもやした」ジレンマが続いていた。

「製材流通や工務店支援など、新しいやり方があるのではないか」と考えていた能口さんと出会ったのはその頃である。



◆  ◆  ◆



能口さんの自宅の離れ屋にウッズを設立したのは二〇〇五年一月。



この会社の最大の売りは、立木の購入から建材加工、設計・施工までトータルに請け負うことにある。山の所有者から立木を直接購入して中間流通コストを省き、家を建てたい人をその山まで案内して立木を見せる。つまり、山の所有者もクライアントも喜び、ウッズも設計段階から関わるオーダーメイドの家造りである。この仕組みを「Sound Woods」と名づけ、ウッズは地元の工務店と連係してその普及に取り組んでいる。



「この仕組みは、『加美裏山からの家づくり』というネームで、西脇市の森林整備事務所の土肥さん人がつくっていました。森を健全に管理していくためにも良いシステムだと会社に提案しましたがコストに合わないと却下された。社長の思いは分かるけれど、それなら独立するしかない」と決意した能口さん。安田さんも「木材のわかる人、同じ言葉でしゃべれる人と一緒にやりたい」と思っていた。



これまでウッズが「Sound Woods」で建てた家は十五軒ほどだが、循環型システムとして全国から注目される。現に、能口さんは全国唯一の「木材コーディネーター」としてマスコミに登場することが多く、講師やコンサルタント、丹波市の政策審議会メンバーやNPO活動など、ますます多忙な日々である。



能口さんは、このWebで「山と森、木の声」を連載しています。