日本の種は一個もない。「ここは外国の農協ですか?」

若杉ばあちゃん、お元気ですね~。相変わらず自給自足の生活をしながら全国を講演会などで駆け巡っているようです。

昨年春、京都で開催された「桜沢如一とリマの顕彰会」の集まりで、若杉ばあちゃんと出会いました。歯に衣着せぬ物言いをしますが、愛嬌のあるかわいいおばあちゃんなので憎めないし、実践に基づいた発言なので説得力があります。

月刊Macrobiotique の最新号(2014年4月号)に、日本CI協会・勝又靖彦会長との対談(陰陽談義)が掲載されていたので、ちょっと気になった一部を紹介します(ちなみにこの4号には、ぼくの原稿「永遠の少年GO」も載っています。)

若杉:昔、大豆を育てていたときに、在来種とF1種を比べて、F1種は成長が早いことに気がついたんですね。F1種は茎が伸びて双葉が出る頃、在来種の方は土が少しこんもりするくらいにしか芽が出ていなかった。そしてまたしばらく観察していくと、どんどん茎が伸びていって、F1種は私より高くなりました。在来種は私の腰くらいでしたね。
勝又:大豆はそのくらいですよね。
若杉:そうなんです。F1種は葉っぱも出てきたし、花を咲かせるなと思っていたらなかなか花が咲かない。やっと咲いたと思ったら、不気味な幽霊のような花でした。
「これで、さやができるのかしら?」と思っていたところ、人指し指のようなぺちやんこの細いさやができたので、「さやができるということは、一応豆はできるのかしら?」と思ったら、待てど暮らせど一粒もできなかったんですね。それを見て「この次の世代に繋ぐ子種をつくらない、人間で言う生殖器の無いような大豆を食べていたら、身体がおかしくなる、そして身体に同じようなことが起こる」と察しました。
子どもの頃から親が採取した種を使って農作物を育て、戦中・戦後を生きてきましたからね。野菜の出来具合を見ればよくわかるんですよ。だから、余計にその「おかしさ」を強く感じたのです。
また、普段から自然な良いものを食べているので、味の違いもよくわかります。特に豆腐。今の豆腐は本当に美味しくない。一俵=60㎏から1万~1万2千個ほどつくっているし、そこには増量剤などのたくさんの添加物が入っている。酷い豆腐が多くなりました。
それに対して、百姓から買った大豆で作っている豆腐はせいぜいできて6千個。この差に驚いて、これは異常なことだと思っていたところで、桜沢如一先生の本に出会う機会がありました。改めて在来種に注目をするきっかけになりましたね。
(略)

若杉:私はよく農協に行くのですが、そこで「日本の種ありますか?」って聞くんです。
勝又:日本の種ね(笑)
若杉:そうしたら「日本の種?」って言うの。種はあると言うから見てみると、日本の種は一個もない。「ここは外国の農協ですか?」ってまた聞くんです。それを聞いた娘が「母ちゃんやめなー」って言うけど、わざとそういうところで聞いてみるんです。農協と行政と国がトライアングルで今のような世の中を作っているから、そこで私は野草を広げないとダメだ!と思っているんです。
勝又:その昔、農薬を売って儲けたのが農協ですからね(笑)
若杉:でも、農協だけが悪いわけではないですし、国にも責任があるわけです。
勝又:一番悪いのは、お金が欲しいと言っている大衆でしようね。そこに国は従うしかないじゃないですか。
若杉:なので、私は講演会で「消費者一人ひとり、あなたたち一人ひとりが変わらないと世の中は変わりませんよ」とよく話しています。
勝又:その通りですね。
若杉:だからあなたたちはしっかり料理の勉強をしなさいと言っています。今、私の本を読んだ読者の方たちがたくさん講演会に来てくださいます。そのほとんどが陰陽の陰も陽も知らない方たちですが、この前の講演会には600人も集まりました。」
勝又:すごいですね!そういえばこの前、某テレビ番組に出演されていましたが、種の話はしていませんでしたよね?」
若杉:そうなんです。実は「ばあちゃん、F1や農薬、放射能、原爆の話は話してくれるな」というわけで、一切話さなかったんです。生放送の違う番組で合成洗剤の問題について話したときは、某王手の会社の名前を出してしまってテレビ局の方に注意を受けまして(笑)。今でもテレビ局から依頼があるのですが、全部録画放送ですね。(続く)

コメント:いま、在来種の保存継承はとても重要なことで、全国的にその運動は広がりつつある。しかし、有機無農薬栽培でがんばっている農家でもF1種のお世話にならざるをえないのが現実で、もしF1種の野菜をなくしたら、スーパーの野菜売り場はがらがらの状態になるだろう。
「ここは外国の農協ですか?」なんてストレートにモノ言えるのは、若杉ばあちゃんぐらいかもしれない(笑い)。昨年ヒットした著書『長生きしたけりや肉はたべるな』(幻冬舎)も、おばあちゃんらしいタイトルだなぁ(笑い)。
また、若杉ばあちゃんは、(F1種の大豆は)「やっと咲いたと思ったら、不気味な幽霊のような花でした」と言っている。F1種にそんな事実はあるにしても、こういう発言ですぐ「F1種はすべてダメ、怖い」と短絡的に考える消費者が増える。在来種を広める啓発的意味合いはあるけれど、大きな誤解も招きかねない。在来種を専門に販売する野口種苗研究所の野口さんでさえ、そういうこと(恐怖をあおること)は言はないだろう。
実際、F1種がなくなったら(ごく一部の農家を除き)日本の農家はやっていけなくなるのだから、大型スーパーの野菜売り場も消費者もたちまち困る。それが現実ということをまず認識しておく必要がある。
参考までに、野口種苗研究所の下記の記事も読んでほしい。 村長 平野
タネへの恐怖を煽る「女性自身」の記事を検証する(「野口種苗」のコラム記事より)

野草料理研究家 若杉友子
(わかすぎともこ)
1937年大分県生まれ。様々なボランティア活動を行っていたときに自然の野草のチカラに着目。食養を世に広めた桜沢如一の教えを学び、1989年、静岡市内に「命とと暮らしを考える店・若杉」をオープン。1995年、自給自足の生活を実践すべく、京都府綾部市の上林地に移住。出口春日氏が主催する「若杉友子の料理室」や中村陽子氏が理事長を務めるNPO法人「メダカのがっこう」の野草料理教室やセミナーなどでう活躍。全国を駆けめぐり、陰陽の考え方にもとづいた野草料理と、日本の気候風土に根ざした知恵を伝え続けている。著書に「若杉友子の野草料理教室」(ふーよよ企画)、「子宮を温める健康法」(WAVE出版)、「長生きしたけりや肉はたべるな」(幻冬舎)などがある。(同誌より)