蕗 (ふき) の薹 (とう) 見つけし今日はこれでよし


 早春のこの時期、 ご飯の友の定番がある。 フキノトウのつくだ煮だ。

白いご飯の上にそっとのせて食べると、 食が進む。 「蕗 (ふき) の薹 (とう) 見つけし今日はこれでよし」。 これは青垣出身の俳人、 細見綾子の句。 フキノトウは、 綾子がもっとも好んだ食物だった。 ▼早春の地を割って出てくるフキノトウ。 綾子も、 フキノトウを口に含みながら春の土の恵みをかみしめたのだろう。 そんな綾子が作詞した母校の芦田小学校の校歌は、 「土の恵みの香の中に」 で始まる。 綾子にとって、 丹波の土は特別なものだった。 ▼著名な宮大工、 西岡常一は、 同じく宮大工だった祖父の意向で農学校に進んだ。 「人間ちゅうもんは土から生まれて土に返る。 土のありがたさを知らなんでは、 ほんとの人間にも、 立派な大工にもなれはせん」。 それが祖父の考えだった。 ▼ブラジルに移民した日本人は、 まず土のひとかけらを口にし、 なめたという話がある。 なめることで土の良否を知り、 どんな作物が適しているかを考えた。 土をなめる行為にヨーロッパ系の移民は驚いたそうだが、 日本人にとって土はそれほど近しいものと言える。 ▼土は作物を育てる。 しかし、 それだけにとどまらない。 西岡が農学校で土に親しみ、 綾子が 「土は、 父とも母とも同じものです」 と書いたように人も育てる。(Y)

丹波新聞(丹波春秋)より 2014年03月16日

コメント:この俳句も佳いけれど、西岡常一の祖父の言葉もいいですね。常一が農学校に進学したとは知らなかった。それはそうと、この春は蕗の薹を食べないまま過ぎて花が開いてしまった。今日はつくしを摘もうかな。