続く放射能汚染と食品への不安

 特に若い母親世代は切実

  最近、関東方面からの野菜の問い合わせがある。話を聞いてみると、多くは関東で安全な農産物を購入されてきた方で、今回の福島の原発事故以来、食品への放射能汚染の不安から、西日本の安全な農産物を求められておられるようだ。特に若い母親世代は切実で子供を放射能の内部被爆から遠ざけたいという強い思いがある様子で、人ごとは思えない不安が伝わってくる。

  江東区で政府の発表の10数倍の放射線量
  放射能汚染の問題は連日のようにあちらこちらで発表され、問題の収拾がつく様子がまったくないようだ。昨日は東京の江東区の汚泥処理施設周辺から高濃度の放射能(2300ベクレム)が検出された。元々、放射能汚染に不安のある江東区の主婦が中心になってガイガーカウンターで自主的に調べ始めたところ、政府の発表の10数倍の放射線量(0.2マイクロシーベルト)を検出、神戸大学放射線計測学の山内教授に調査を依頼し事実がわかった。
  江東区以外でも神奈川、福島等の汚泥処理施設からのすでに高濃度の放射性物質が検出されており、知らずに汚泥を焼却処理しているところから空気中に放射性物質が拡散していたようだ。汚泥処理場では福島第一原発から放出され、各地に拡散した放射性物質が雨などの時に排水溝を通じて集まり濃縮したようだ。
  江東区以外でも住民が自主的に空気中の放射線量の計測を始めており、秋葉原ではガイガーカウンターが飛ぶように売れているらしい。政府発表の数値は新宿では上空18メートルに計測値が設置されていたりして現実から遊離しており、住民が調査した生活圏での数値とは食い違いがある。場所によっては空気中の放射線量が国際的な基準である年間被ばく量1ミリシーベルトを上回る地域があることがわかってきている。

  何が正しいのかさっぱり分からない
  しかし研究者によっては年間被ばく量100ミリシーベルト以下であればなんら健康被害をもたらす心配もないと主張しマスコミ、講演会などで発表していることもある。逆に100ミリシーベルト以下の放射線は逆に健康によく、発がん率を抑制するので心配ないとの意見もある。最近の研究では低線量被爆であっても発がん性の可能性はあり、安心すべきではないという研究結果もあり、混乱する。
  スリーマイル島原発事故の発表でも、何も健康被害が起こらなかったとする説がある一方、放射性物質が拡散した風向きに多くの白血病患者がいたという発表があり、広島・長崎の被爆者の健康追跡調査でも放射能の影響をわずかであるとする研究者と影響は大きいとする研究者に分かれ、結局、何が正しい情報であるのかさっぱり分からない。
100ミリシーベルト以上であれば急性の健康被害がでることがわかっているが、それ以下である晩発性の健康被害は早くて2-3年、遅い場合で10数年後に出てくるようなので、追跡調査も難しいそうだ。

  チェルノブイリ原発事故当時を上回る放射能
  同じ放射能の影響でも内部被爆と外部被爆では異なるはずなのに、一律、数値で安全であるかどうかを判断することも難しい。また、今回の福島原発事故の場合は、放射性物質が長期に渡り放出されており、原爆など一回で爆発し放射性物質が拡散した場合とは大きく異なるはずである。福島原発の放射性物質の放出量は、チェルノブイリ原発のものよりは低いとされているが、それでも今回の事故では37京ベクレムの放射能が放出されており、広島の原爆から放出された放射能をはるかに上回る数値になっている。しかも「文部科学省及び米国DOE(米国エネルギー省)による航空機モニタリング」の結果では、福島周辺ではチェルノブイリ原発事故当時を上回る放射能が拡散していたことがわかっている。これは4月29日に日米合同で実施したヘリコプターと航空機から計測したもので、この結果では20キロから30キロ圏外の飯館村などの高濃度汚染地域で300-3000万ベクレムあった。チェルノブイリでさえも最も高濃度な地域が148万ベクレムなのでどれだけ汚染濃度が高いかわかる。
  周辺の伊達市、福島市では原発から60キロも離れているにも関わらず、60万―300万ベクレム汚染されている地域がある。それから二本松市、郡山市などでも50キロ離れているが30万―60万ベクレム汚染されていて、チェルノブイリではこのレベルはすべて「強制避難」地域に指定されていた。そこに子供も含め、住民が今も生活しているのである。

  継続して仕事ができるように支援すべき
  チェルノブイリ原発事故の時、汚染は日本にも達し、三重県の渡会茶は放射性物質が検出されたため、その年のお茶を全て廃棄した。福島原発の事故後も遠い地域でも放射能は検出されている。神奈川県では足柄茶から、最近では静岡茶の一部から検出され出荷が自粛されている。
  兵庫県(兵庫県立健康生活科学研究所)でも大阪府でもいちおう行政が雨水、水道水、空気中の放射能測定を実施しているが、今のところ検出はされていないらしい。しかし、どのような条件のもとで計測されているのだろうか。兵庫県では農産物の放射能物質の検査を実施していて、4月には県内のハクサイ、キャベツ、レタス、5月にキャベツ、6月にニンジンの分析を行い、放射性物質は一切、検出されていない。
  丹波市有機農業研究会で放射能の計測機を購入する方向で話が進みつつある。
しかし、近場の農産物が大丈夫であっても、それ以外から入ってくる農産物や海産物はどうなのでろうか。5月3日から5日までのグリーンピース(環境NGO)調査では、福島原発の沖合50キロで採取した海藻から1キログラムあたり13000ベクレム以上の放射性物質が検出された。また昆布、フクロノリなどからも23000ベクレム以上検出された。こうなると近辺もしくは同じ海域での魚貝類ももっと詳しく調査をする必要がある。大量に放出されて汚染された大地、海、「風評被害」と言われるが、本当に「風評」なのか心配である。汚染地区の復興を進めるより、周辺の農家、漁業関係者を他の地域に移住してもらって、継続して仕事ができるように支援する形を作るべきではないか。
  チェルノブイリ原発事故の時は汚染地域で生産された農産物や乳製品が外国にいったん輸入され、産地を偽って多くの食品が売られることがあった。安易に汚染された地域で食糧の生産、収穫を容認していいものか。汚染された地域の生産者を応援することは間違ってないが、応援の仕方が間違ってないか。それにしても原発事故とはなんと恐ろしいものなのか。これを継続せよという主張がどうしても納得できない。   (市有研だより6月号 橋本慎司)