原発事故に思う(被爆2世として)

 この度の、地震・津波・原発事故により被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

 福井で号外をもらったとき・・・

 3月11日震災の日、日本有機農業研究会の大会があった福井の武生駅前でもらった号外には「福島第一原発、炉心溶融!」と書かれていた。25年前のチェルノブイリの原発事故当時の記憶が蘇り、もう、この世の終わりだと思った。とにかくヨード製剤を準備して、子供を救わねばと思った(が、これは少し早急すぎた)。

 父の被爆体験を聞いて

  チェルノブイリの原発事故以降の数年、日本では反原発の運動が盛り上がっていた。もともと広島出身で父の被爆体験を聞いていたので大変関心があり、大阪でデモ行進にも参加したし、勉強会にも熱心に参加し、本も沢山読んだ。
当時はたった1つの原発事故で世界中がパニックになっていた。チェルノブイリから8000キロ離れた、日本にも放射能の影響があり、三重の無農薬栽培のお茶農家が放射能検出されて、その年収穫したお茶を全て焼却したことが原発の影響の大きさを指し示すものであった。
また欧州の人たちは放射能の影響を気にしながら食品を食べるはめになった。イタリアでは原発を恐れ、国民投票で国内では原発を推進しないことになった。ドイツでは有機栽培農家が放射能を浴びた農産物が売れなくなったことも聞いた。安全・安心であればこその有機農産物であり、放射能で汚染されれば一番被害を被る。

  まさに身土不二の関係にある

  今回の福島第一原発の事故でも、長年堆肥を入れ、土作りをしていたキャベツ農家が自殺された。大変、残念なことである。
このキャベツ農家のみならず、第一次産業に携わる者は、今回のような事故があると、非常にきびしい状況に立たされる。農業も漁業も自然界の営みとは切っては切れない関係にある、自然の土が汚されるとわが身も汚される、まさに身土不二の関係にある。思えば、市島町有機農業研究会がゴルフ場問題に直面した時も、我々有機農家や消費者は単に安全なものが届けばそれでいいのかということが議論になった。

  日本は75キロ圏内に3300万人  

  現在、世界には211か所に原発が存在するそうだ。そしてその半径30キロ圏内にいる人口を合計すると9000万人ぐらいいるらしい。そのうち1600万人は米国人で、中国、ドイツ、パキスタンにそれぞれ900万人、台湾、インド、フランスにはそれぞれ500万人から600万人近くの人々が暮らしている。これを75キロ圏内に拡大すると、米国には1億1000万人、中国に7300万人、インドで5700万人、ドイツに3900万人、日本に3300万人の人々が暮らしている計算になる。つまり、かなりの確率で人類は原発事故に将来、遭遇する可能性を秘めているわけだ。

  世の中に100%などない

  チェルノブイリの原発事故が起こった当時、日本では原発事故は100%起こり得ないと電力会社の人たちは説明していた。しかし、世の中に100%ということがあるのか?当時から胡散臭く思っていたがまさに悪い予感が的中した。   1979年に米国のスリーマイル原発事故、1986年にはチェルノブイリ原発事故、そして今回は深刻な福島原発事故だ。どの事故でも被害は甚大でとてももと通りに戻すことなどはできそうにない。このまま続けると、次はどこで起こるのかということになってくる。
管総理の英断(?)により、一番、心配であった浜岡原発は運転停止が決定した。
しかし、地震の心配は日本どこでも同じである。特に四国の伊方原発、九州の川内原発も地震の震源地になる可能性が高い。また浜岡原発の運転は中止しても放射性物質を放出する燃料棒はそこにあるわけであるから、心配が回避されたことにはならないのではないか。福島でも使用済みの核燃料施設で水素爆発があったのは事実だ。
また、浜岡原発停止に伴って、また電力不足の問題が浮上してきている。原発を停止すると電力が不足し、産業や景気に影響を及ぼすという。
しかし2009年の駿河湾地震のおり、浜岡原発は8月11日から9月14日まで地震後の検査で停止しており、特に節電の呼びかけなしで夏の電力ピークを乗り切った実績がある。本当に、原発を止めると電力が不足するのか。京都大学・原子炉実験室の小出氏によれば、日本の発電所の平均稼働率は50%ぐらいで、発電量の多くを占める火力発電の設備利用率は70%くらいなので、原発を止めても計算上は夏のピーク時であっても電力供給不足は起こらないそうだ。原発に反対するなら、電気を使うなと言われるが、全ての発電所の実質的な稼働率からすると原発はわずか18%で、よく言われる電気の30%は原発であるというのは稼働利用率のことであるようだ。もちろん節電することはどの時代であれ大切なことである。
原発問題については調べれば、調べるほど複雑でさまざまな利権も絡んでおり、解決の道は難しい。
   事実を知らされていない!  「広島の原爆の48倍」という説も  

  私の父は原爆が広島に投下された時、広島駅にいて被爆した、父の同級生の多くが被爆後、ガンなどで亡くなったそうだが広島に住んでいた我々でさえ、「被爆」とか「放射能」の危険性について教わっていない。よく考えれば日本は世界で唯一の被爆国なのに誰も放射能の影響について教育を受けていないのはどうしてなのだろう。
今回の福島の原発事故で放出された放射線量は広島の原爆の48倍だという説もあるそうで、もしそれが事実なら大変なことだ。本当に、東北、関東に住んでいる友人、親戚は安全に暮らしているのか?テレビの専門家の説明では外部被ばくと内部被ばくのことがごっちゃになっており、とにかく大丈夫であると強調するのみで余計に不安だ。魚介類も検査には頭と内臓を省いて検査しているとか、飯館村では土を深く掘り下げて採取したので高い数値がでなかったとか、安全といいながら、最近、いわき市の下水汚泥から33万4000ベクレムの放射能が検出されたとか、福島原発近辺の海水から非常に危険なストロンチウムが検出されたとか。何が真実かなかなか見えてこないのが現状であり、だからこそ原発は恐ろしいのであろう。我々はもっと事実を知ろうとする必要があるのではないか。

  2次3次被害もある

  広島でも原爆投下後、放射能の影響によってさまざまな被害がでた。白血病、ガン、目に見えない放射能に怯え、広島の人々は「被爆者」との結婚を躊躇した。また原爆症に苦しむ人には鯉を食べるのがいいらしいなどあまり科学的でない噂も広がり、鯉の養殖をする人も増えたそうだ。
しかし、今回の福島の現状を見ていると、福島ナンバーの車がガソリンスタンドで給油を拒否されたとか、福島から避難してきた子供が学校で差別にあったとか、広島で66年前に起こったことがまた繰り返されているわけだ。

  被爆国の無知・・・恥ずかしい

  広島では原爆以降、ノーモアヒロシマを合言葉に平和公園ができ、広島では毎年平和コンサートや平和式典、平和の名のつくイベントが数々開催されてきた。ところが今回の福島原発で66年前の経験や体験は少しも活かされず、それどころか被爆国である日本人自身が放射能のことをなにも知らずにいたことが解ったのではないか。綺麗ごとの平和運動で実質が伴わないのであれば意味がないではないか。自分自身も被爆2世として恥ずかしいことであると思う。
原発の一基から毎年ドラム缶1000本分の「低レベル放射性物質」がでるそうだ。これが安全なレベルに達するまで300年かかるそうだ。どこにこれを300年間も保管するのか?気の長い話であるし、非現実的な技術であると思う。非現実的なエネルギーに我々人類の行く末を左右されるのはまっぴらだ。(市有研 橋本慎司)