京都発:おばんざい奥義の書 今井さん「歳時記」刊行

「味を見る時は目を閉じるもんや」
「食べ物は神様。端っこも捨ててはあかん」


郷土料理研究家の今井幸代さん(79)(右京区)が、料理研究の集大成となる「京のおばんざい歳時記」を刊行した。家庭で受け継がれてきたおばんざいの魅力や京都の料理の歴史を、写真とともにつづったエッセー集だ。今井さんは「旬やうまみを大切にする京都の料理を、若い世代に知ってほしい」と言う。(磯江祐介)
今井さんの生家は御室仁和寺領で庄屋をつとめた旧家。料理上手の祖母が、台所で煮炊きする姿を見て、昔ながらの京都の料理を自然に覚えた。
「味を見る時は目を閉じるもんや」「食べ物は神様。端っこも捨ててはあかん」
おくどさん(かまど)の前で祖母がつぶやいた料理の心得は、今も記憶に刻まれているという。
 16歳でミス京都に選ばれて様々なイベントで活躍した後、21歳で結婚。近所の嫁ぎ先は17人の大家族だったが、1人で台所仕事を担った。嫁ぎ先は牧場経営もしており、従業員の朝食も作った。早朝から晩まで仕事に追われるうち、効率的においしく仕上げる料理法を考えるようになった。
牧場の訪問者に出したみそ汁や野菜の煮物が喜ばれ、「うちの妻にも教えて」と頼まれたのをきっかけに、45歳の頃、初めて料理教室を開いた。鍋一つを使って、デザートも含む5、6品を作る独自の料理法が評判を呼び、京都だけでなく、東京でも教室を主宰。婦人雑誌やテレビなどでおばんざいを紹介してきた。
2006年6月、心臓の病で倒れたのを機に、「祖母から教わった昔の暮らしを伝えたい」と料理本の刊行を思い立ち、3年がかりで仕上げた。
「風物の抄~嵯峨の歳時記~」と題した章では、4月のタケノコ、5月のエンドウ豆など、季節ごとの食材をテーマに、嵯峨の風情や、子どもの頃に祖母が作ってくれた料理を紹介。「京料理の起源」の章では、自ら研究した平安時代の大饗(だいきょう)料理について解説した。
京野菜や旬の食材を使ったおばんざいの写真も多数掲載。レシピは添えていないが、「『理を料(さば)く』という事」の章を設け、「誰も自分に合った工夫を見つけることが出来ます」「工夫好きはお料理好きになります」と、料理上手になる心構えも盛り込んだ。

続き YOMIURI ONLINE (2014年3月3日 読売新聞)