異 食

異食の原因は心が寂しいからだとよく言われます。


異食とは食べてはいけないものを食べることです。いろいろな例があります。テイッシュペーパーをいつもガムのように噛んでいるおじいちゃんとか、孫息子のヘアクリームをなめていたおばあちゃんもいます。でも、不思議なことにお腹をこわさないんですね。0157も真っ青というくらい雑菌が入っているだろうに、下痢もしませんから不思議です。異食するような人は胃腸が丈夫なんでしょうか(笑)。
(略)

 異食の原因は心が寂しいからだとよく言われます。施設などで、たとえば家族の面会が途絶えている時など寂しさが異食につながるとよく言われます。私たちも腹が立った時や寂しい時など、食べることで気分をまぎらわしますね。
お年寄りも身近に食べ物があれば黙々と食べ続けるのかもしれませんが、食べてはいけないものばかりがあるなかでは、なんとなく食べられそうなものを選んで食べているのだろうと思います。何か心に引っかかるものがあったり、心に負担感があった時、異食という行動が起こるのかもしれません。問題行動の影には、問題行動が読み取れない介護があるのではないでしょうか。
そういう問題介護がお年寄りの異食行為につながるのかもしれません。
私か関わったったケースで一番驚いたのは、猫の排泄用の砂を食べてしまったおばあさんです。そのおばあさんの部屋はおばあさんが出てこられないようにいつも“しんばり棒”でふさいでありました。
部屋を出たところに、猫の排泄場所があり、たまたま、“しんばり棒”が倒れて開いた入り口から出た時に砂に手が出たということでしょう。前からハンドクリームをなめたりしていたこともあり、家族は異食行為に注意はしていたとのことですが、“しんばり棒”を使われている生活のほうにむしろ、問題があると、私には思えるのです。この方はデイサービスに週2回出てくるようになって、異食が治まってきたようでした。

出典:『ぼけの始まったお年寄りと暮らす』金田由美子 筒井書房(2007)

コメント:介護の世界では心理学的(ストレス)に説明されているが、もともと人間には異食の傾向(本能?)があるようだ。
ウィキペデイアには、「異食症(いしょくしょう、羅: pica)」として解説されている。
「栄養価の無いもの(土・紙・粘土・毛・氷・木炭・チョークなど)を無性に食べたくなる症候。小児と大人の妊婦に多い。picaとはラテン語でカササギを意味する。カササギは何でも口に入れることから名づけられた。」
分類として
・氷食症-氷を異常な量食べてしまう。大人に多い。
・土食症-土を食べてしまう。子供に多い。
・食毛症-体毛をむしりとって食べたりする。子供に多い。精神的ストレスと関連が深い。
そして原因として以下の点が挙げられている。
・栄養障害・栄養不良(特に鉄欠乏性貧血・亜鉛欠乏)が原因のことがある。
・若い女性で、妊娠時に軽い病態がみられることがある。極度の精神的ストレスが原因のことがある。
・精神遅滞・精神疾患合併の一症状としての原因が考えられる。
・脳腫瘍による異常行動の一症状としての原因が考えられる。
・寄生虫の感染(特に鉤虫症)の場合がある。

なお、本書は120ページと薄い本だが、これからますます求められる「家族・地域で支える在宅介護」のポイントや心得をよくまとめている良書だ。