イギリス訪問記

総勢7名が参加

10月24日から11月2日まで、CSAの実態調査と英国土壌協会との交流のためイギリスを訪ねた。
今年2月の神戸大会に召喚したイギリスのクリスティン・グレンジングさんは英国土壌協会のCSA部門で働きながら、イングランド北部で農場に関わっている生産者だ。彼女は神戸大会の折、日本の提携団体に大変関心を抱き、帰国後、有機農産物を通じた生産者と消費者の提携のあり方の情報交換をしながら交流を深めたいと、英国土壌協会を通じて現地で基金を集め、互いの国を行き来し、両国の生産者と消費者が学び合うプログラムを立案し、私たちの訪問が実現することになった。
 日本からは、日本有機農業研究会の埼玉の生産者、並木さん、神戸大会事務局の三好さん、兵庫県有機農業研究会の私と代表の本野さん、事務局長の赤城さん、熊本有機農業研究気会の吉川さんと生産者の緒方くん、計7名で参加することになった。
今回の研修ツアーの日程は
10/25 24日、関空発で25日にロンドン空港に到着
10/26 フードバンク、フューチャー農場(CSA)
10/27 フードフォオール生協、コミュニティ農園、
     セイント・ニコラスマーケット(ファーマーズ・マーケット)
     ブリストルの英国土壌協会本部での交流会
10/28 コミュニティ農場、ベターフード社(自然食品)
10/29 ストラウド・コミュニティ農場(CSA)
10/30 ドラゴン果樹農場(CSA)カナルサイド・コミュニティ農場
10/31 メノー農場(畜産)
11/1  発
11/2  関空に到着

 クリスティンさんが大型バンで案内

  ロンドン空港到着の翌日から連日、さまざまな農場を訪ね、英国のCSAの実態について学んだ。訪ねた農場のほとんどがコミュニティ農場といわれるもので、都市住民が中心となって消費者会員を募集し、農場を確保し、そこに農家を雇うという消費者側から始まったCSA農場が多かった。その他、地産地消型地域生協など、地域主体の活動を中心に見学してきた。
見学はクリスティンさんが自ら大きなバンを運転して車での移動。最初から最後まで運転してくれた。彼女は20代後半の美しい英国女性で、土壌協会の職員でありながら自らも農場で羊を飼い、今回のプログラムも滞りなく遂行し、7日間疲れをものともせずに各地を運転して回るというスーパーウーマンで、参加者も驚かされた。通訳は、現在英国土壌協会で研修中の留学生の愛菜さん、一日だけ沖縄に留学していたプロの織物職人ティムさん、後半の2日は大学の日本語学科で学び、日本にも滞在経験のあるアリスさんが手伝ってくれた。

日本食や文化も浸透

予算には制限があったので宿泊はユースホテルかホームステイで、全部で3家族の家を転々とした。最初のホストファミリーは旦那さんが弁護士、奥さんは土壌協会に勤務。日本に大きな関心があり、旦那さんのトムさんは若い頃は空手をやっていたそうだ。家には木刀もあり、何故か宮本武蔵の「五輪の書」の英訳本も持っていて、武士道に大変関心があるようだった。寿司を始めとして日本食もイギリスではブームで玄米や味噌を食べる人もいたりして、日本の文化が浸透している様子がわかった。
2軒目のホストファミリーの夫婦はストラウド・コミュニティー農場の消費者会員宅。旦那さんは学校の先生で、子供を将来ストラウド市内にあるシュタイナー学校に入学させるためわざわざ引っ越してこられたそうだ。完全ベジタリアンでお酒も飲まない。イギリスではベジタリアンでも、魚は食べる人、牛乳、チーズは食べる人、まったくの菜食主義者とさまざまだ。住んでいる住宅もユニークで会員を募って土地を物色し、全員の合意の中で建築計画を立てた80軒くらいのコミュニティー住宅である。夕食は皆で食べる場所があり、各家庭が持ち回りで夕食当番が回ってくるそうだ。もちろん、全員で食べることは強制ではなく当番はするが夕食をいっしょに食べない人もいるそうだ。
最後のホストファミリーもカナルサイド農場の消費者会員。旦那さんはコンピューターの仕事に就き奥さんは主婦。子供が3人。ここもベジタリアン。どうも有機農産物を食べる人はベジタリアンが多いようだ。旦那さんの趣味はフェンシング。家についてすぐにパブに直行、ビール片手に語り合った。イギリスではこのパブ(居酒屋)が地域の人々の憩いの場になっているようだ。仲間、友人、夫婦が日本の喫茶店の雰囲気で静かにビールを飲んで語り合っている。しかも日本の居酒屋のようにワイワイうるさい雰囲気ではなく、まさに喫茶店のよう。基本的にご飯は家で食べてくるようで、つまみもなしでチビチビとビールを飲みながら語り合う感じで、このイギリスのホップの利いたビールがうまい!(残念ながら料理はさほどおいしいものもなかった。強いて言えば、初日にパブで飲んだスープか?)
パブの後に行ったのがソーシャルクラブというもの。これは何と、公民館で市民が運営している市民パブ。日本の公民館は通常、お堅い場所で、勉強会か研修、会議に使われているのみだが......。このソーシャルクラブはイギリス人の憩いの場であるパブを公共施設である公民館に持ってきて地域の人々が集う空間を作っているようだ。ソーシャルクラブは地域住民が会員となり、理事会を作り、人を雇ってパブを運営し、安いローカルビールを提供している。ここでは様々な行事が企画されていて、ビリアード大会、クイズ大会、地元スポーツチームの応援、カラオケ大会などが行われているそうだ。地域住民が気軽に立ち寄れる場では近所の人々と顔なじみになり、仲間意識も生まれ、自治の精神も育つ。大変、おもしろい取りくみだと感心させられた。

どこもかしこもオーガニック

イギリスでの有機農産物の消費者購買層の厚さにも驚かされた。とにかくどこに行ってもオーガニックのものが見られる。一般の食品スーパーにもオーガニック、テスコなど大型スーパーでもオーガニック、農村部の「道の駅」にもオーガニック。都市部のファーマーズ・マーケットでもオーガニック。チャールズ皇太子は有機菜園を持っているそうだ。
最近、経済不況で有機農産物市場が伸び悩んでいるとは聞いていたがなんのその。日本と比較したら、有機農産物の多さは雲泥の差である。マーケットの他に一般市民に有機農業の理解を深めるために作られた、オーガニック公園というのもあった。有機菜園をするための有機農業ホームセンターにも立ち寄った。ここには日本でもまだ少ししか存在しない、有機栽培種子が何百種類と販売されていた。英国土壌協会で聞いた話では、他にも有機農産物を食材としたオーガニックレストラン、オーガニックビール、オーガニックコットンを使用し、オーガニック食材の料理を出すオーガニックホテルも存在する。オーガニックの小売店、パブ、ホテルなどには一定の基準があり、日本の有機農産物のように認証を受け、認定されている。日本にもオーガニックレストランはあるが基準も検査もないので一体、食材のどのくらいの割合が有機農産物であるのか不明である。
旬の有機野菜ボックスを売る会社、食品生協なども多数存在し有機農産物があちらこちらで手に入る恵まれた状況がありながら、めんどうな運営委員会があったり、さまざまな活動があるCSA(日本の提携運動)が広がりつつあるのも不思議である。どのCSA農場にも若い20代、30代の夫婦が会員になっていて、非常に羨ましい状況だった。 【2010年11月号 より】