しゅんに食べるのが食通

食べものの選び方は、むかしもいまも、すべて天然自然に順応することを基本とすることに変わりはありません。

まず第一に住んでいる土地で生産される穀類の中より、もっともよいものを選び、それが不足の場合には、その土地で産み出される他の穀類、野菜、動物性食品などを選び、また、なるべく、その季節にできるもの、すなわち、しゅんのものを食べるようにすると、私たち人間のからだの諸器官は、その気候風土に耐えられるよう抵抗力が培われ、延命長寿を保つことができるのは、争われない事実です。
これはまったく自然の妙機とも言うべきもので、自然の恩恵の偉大さは、とうてい人智で推し測ることのできないものです。
季節と食べものの関係について、石塚左玄という人の道歌に―
春苦味夏は酢の物秋辛味 冬は油と合点して食へ

とありますが、この道歌のこころにしたがって、四季折々の食べものを選べば、まずまちがいありません。
この歌の意味するところは、季節ごとにできるものを食べろということで、春にできるものは、ふき・せり・よもぎ・よめななど、総じて苦味を帯びており、夏にできるなす・きゅうり・トマト・・・などは、多少の酸味を含んでおり、秋にできるものは、しょうが・とうがらしなど辛味のものが多く、つまり、季節ごとにできるものを食べ、もしそれらのものが不足した場合に、歌に示された味のものを、時々食べるようにすればよいというのです。

このようなものが、私たちのからだにどのような影響を与えるか――ということを説明するとなるとなかなかむずかしくなりますが、かいつまんで申しますと、春、私たちのからだは、冬の間にたくわえた塩分や脂肪分を緩やかにし、徐々に夏の暑さに対する準備をしなければなりません。
苦味はその点、塩分や脂肪分を緩和するのに、有効なはたらきをします。夏の暑さに耐えるためには、体内に、塩気や油分が少ないほうがよく、酢のものを食べるのは、この塩気や油分をぬくのに効きめがあります。
秋は夏場に緩んだからだの組織に刺激を与え、食欲を盛んにし、徐徐に脂分や脂肪分をたくわえて寒さに対する準備をしなければなりません。辛味はこの目的を達成させるのに効果があります。寒さに対して脂肪分がたいせつなことは、ご存知のとおりです。

出典: 『食物ことわざ事典』 平野雅章 文春文庫(1978)

コメント: 地産池消の根本は「身土不二」=「しゅんを食べる」ということでもある。