有機農業に科学思考を

「丹波市有機の里づくり協議会」有機農業講座

丹波市有機の里づくり協議会では昨年に引き続き今年もジャパンバイオファームの小祝政明氏を講師に招き、有機農業講座を開催し勉強会を行った。今回は7月9日、10日の2日間、9日には稲作農家を中心に稲作を、10日には畑作の勉強会を開催した。
丹波市有機の里づくり協議会は有機農業推進法制定に伴い、丹波市が有機農のモデル地域に指定され、市行政・農協・丹波市有機農業研究会(丹波市内の有機農業生産者が集まり結成)市有研も協議会のメンバーとして最初から加わっている。2日目の講座に橋本が参加した。今回は新規就農者を中心に地元の有機農家15名の参加があった。15名の参加者の中には今年市島に入植した2名の新規就農者(丹波太郎の研修生)も加わった。
今回は新規就農者4人で構成されている共同農場(あいたんくらぶ)と昨年1年間橋本農園で研修した兵有研2年目の研修生、山田君の畑を見学した。

 葉っぱの色が薄い・・・ 鉄分とマンガン不足

 最初に見学した「あいたん・くらぶ」は就農8年目の宮崎君と昨年入植した3人のIターン4人で結成されたグループで、一人で農業に取り組むより皆で共同畑にした方が作業効率も良いのでは、との思いから結成したそうだ。共同圃場は前山地区にあり、各々に耕作している圃場と同時並行で共同畑の管理をしているようだ。地元の学校給食にも野菜を供給している。この日、畑には馬鈴薯、胡瓜、ズッキーニ、万願寺とうがらし、オクラが作付されていて、馬鈴薯、ズッキーニ、胡瓜は収穫期を向かえていた。鹿が時々侵入しているようで、ズッキーニが食害されていた。胡瓜は順調に収穫しているようだが、葉っぱの色が少し薄くなっていて、病気が出ているようだった。小祝氏によれば、鉄分とマンガンが不足しているそうで、ミネラル肥料を追肥する必要があるそうだ。

ミネラル肥料を補充して土のバランスを

次に行った山田君の圃場は堆肥が投入され、団粒構造ができていて土がほこほこになっていた。胡瓜も茎はしっかりしているが、山田君曰く、思う程量が採れてないそうだ。小祝氏は葉っぱに水をかけ、どれだけ水を弾くか観察し、ここの圃場も十分堆肥が投入され植物は肥料を吸収する準備ができているにも関わらず、微量ミネラル、特にマンガンや鉄が不足していることを指摘した。
野菜でも胡瓜、トマト、ピーマンなどの果菜類は一本の木から沢山の実を成らすので非常に多くのエネルギーやミネラルを必要としている。堆肥や鶏糞に含まれるミネラル分の量ではそれを補充するのは不十分で、成功している有機農家はミネラル肥料を補充して土のバランスを保持しているそうだ。植物は太陽の光を浴びて、光合成を行う。植物に吸収された二酸化炭素と水は光合成によって炭水化物を生成する。この炭水化物が植物のエネルギーの源になっており、そこにマンガンが介在するそうで、マンガンが不足するとスムーズに炭水化物を生産することができないそうだ。さらにビタミンCの生成にもマンガンが介在しているので、少量であるが重要な働きがあるようだ。光合成によって生成された炭水化物は、植物が酸素を吸収することによってデンプンや糖を生み出す。 

病虫害を呼び込む原因

根の周りの肥料分を分解する有機酸も炭水化物から作られる。タンパク質の合成や細胞分裂にも炭水化物が分解するエネルギーが利用される。これら植物の重要な酸素を体内に送る働き、炭水化物からエネルギーを取り出すのに鉄分が必要になる。トマトの色がうすい赤のままで完熟するのは鉄分不足の兆候で、やみくもに有機肥料を投入するだけでは健康な植物は育たないそうだ。鉄分、マンガンの他にも、マグネシウム、カルシウム、カリ、リン、硫黄、モルデブン、亜鉛、銅、ホウ素なども植物の働きに関わっており、これらの不足が植物の健全な生育を阻害し、病虫害を呼び込む原因になるそうだ。特に有機農業は無農薬で栽培するので植物の体の健康の維持にいかに努めるかが重要で、生物学・化学的な知識が大切だと小祝氏は力説されていた。

有機農業の自然崇拝的考え方が

今まで聞いてきた有機農業の講師の話は化学肥料、農薬を否定し、「自然にもどろう」という説明が多かった。自然は完全でバランスがとれており、自然の法則に則っていれば全ては解決する。有機農業は自然にある有機肥料を利用するのでバランスをとれば良好な農産物ができる。しかし、有機農業の自然崇拝的な考え方は返って有機農業者を科学の世界から遠ざけてきたような気がする。我々、生産者も有機農業の現状に甘んずるのではなく、生物科学の仕組みをもっと学習し、さらなる有機農業の発展を目指すべきかと感じた。