キノコ鑑定と遠野物語

数日前、薪にする木を積み上げていたすぐそばに茶色のキノコが十数個群れ生えているのを見つけた。

庭の隅に放っておいた落葉樹の太い幹からマイタケやヒラタケが出たりするので珍しくはないけれど、一個取ってみると、傘がヌルッとして香りもいいので、あるいはナメコかなと思ったが、念には念を入れないと危険だ。図鑑で調べて、「これなら食べられる」という安易な判断はやめたほうがいい。
そこでいつものごとく、近所のキノコ博士・マリオこと山崎春人さんにこれを預けて鑑定してもらったところ、「エノキダケやね。下の方の軸の部分が黒いのが特徴で、ナメコなら傘の下が・・・」という答えが返ってきた。
エノキといえばスーパーなどで売っているモヤシのような白いキノコだが・・・?
意外な答えだったのでネットで調べてみると、たしかに天然のエノキタケと栽培されたそれとは似ても似つかないものになっている(だが、カミさんによると、「最近はこの茶色のエノキも売ってるわよ」とか)。
キノコにあたる怖さは、「遠野物語」にも書かれているので、十二分にご用心あれ。 (平野)

以下、遠野物語(山の人生 十九)

孫左衛門が家にては、或る日梨の木のめぐりに見馴れぬ茸のあまた生えたるを、食わんか食うまじきかと男どもの評議してあるを聞きて、最後の代の孫左衛門、食わぬがよしと制したれども、下男の一人がいうには、いかなる茸にても水桶の中に入れて苧殻(おがら)をもってよくかき廻してのち食えば決して中(あた)ることなしとて、一同この言に従い家内ことごとくこれを食いたり。七歳の女の児はその日外に出でて遊びに気を取られ、昼飯を食いに帰ることを忘れしために助かりたり。
不意の主人の死去にて人々の動転してある間に、遠き近き親類の人々、或いは生前に貸ありといい、或いは約束ありと称して、家の貨財は味噌の類までも取り去りしかば、この村草分の長者なりしかども、一朝にして跡方もなくなりたり。

出典:『遠野物語』柳田国男 岩波文庫

ウィキペディアによると、
「エノキタケ(榎茸、学名:Flammulina velutipes(Curt.:Fr.)Sing.)はキシメジ科のキノコの一種。子実体は古くから食用とされ、エノキダケ、ナメタケ、ナメススキ、ユキノシタとも呼ばれ、特に食用のものについてはしばしば「えのき」と縮めて呼称される。
コレラタケ - エノキタケの廃培地から発生することもあり、「食用キノコを収穫した後に生えるから大丈夫」と誤解され、食中毒を起こす。」という。

エノキタケもナメタケも同じなのか・・・。雪のなかでも元気だから、ユキノシタとも呼ばれるというのも納得。同じキノコでも名前はいろいろでややこしいが、とにかく食べられるかどうか、それさえわかればいい。

以下もウィキペディア より

「エノキ、カキ、コナラ、クワ、ポプラ、ヤナギなどの広葉樹の枯れ木や切り株に寄生する木材腐朽菌。子実体の発生時期は気温の低い季節であり、晩秋から初春にかけて、雪の中からでも発生する。かさは直径2 - 8 cmで中央が栗色あるいは黄褐色で周辺ほど色が薄くなり、かさのふちは薄い黄色またはクリーム色である。かさの表面はなめらかで強いぬめりと光沢がある。かさは幼菌では丸みが強く、のちしだいに広がり、まんじゅう型からのち水平に近く開く。ひだは上生・ややまばらでクリーム色あるいは白。柄は高さ2 - 9 cm 、直径2 - 8 mmで中空・繊維質である。太さは上下ほとんど同じ。柄の表面は細かい毛におおわれビロード状、上部は茶色で下に行くほど色が濃くなり根元は黒褐色となる。この柄の特徴がこのキノコを見分ける最大の特徴であり、このため「アシグロナメコ」の名で呼ばれることがある。香りは温和。
売られているエノキタケのほとんどは光を当てずに栽培したものである。菌類は光が要らないと思われがちであり、実際、光合成は行なわず、成長そのものには不必要ではあるが、多くの菌類は子実体や胞子形成において光の影響を受ける。光のあるところに出て胞子を作る方が胞子を広く飛ばせる可能性が高いため、光を求める性質を持っているのである。従って、光のない場所で子実体形成を行なわせれば、光を求め、もやしのように細長く頼りない姿になる。エノキタケも光のある場所では、柄が短くしっかりした傘を持つ濃い色のキノコの姿になる。」