「里山資本主義」里山くらぶの忘年会でも話題になったけれど

昨日(14日)は朝9時から、メンバーYさんの山に入り、シイタケ木の伐採を午後2時過ぎまで。山南町の「薬草温泉」で疲れをいやしたあとは、

そこから5分のところにあるメンバーMさんの農家民宿「小野尻庵」でぼたん鍋を囲んでの忘年会(参加11人)。メンバーが持ち寄った純米吟醸でぼたん鍋をつつきながら、となりに座ったAさんが言った。
「里山資本主義という本がべストセラーになってるな」
「ああ、その本は最近たまたま人に借りて読んだよ。ざっと流し読みだけどね」
「要するに、田舎暮らしが最先端の暮らしというこっちゃな・・・」
「そう、何も目新しいことを書いているわけじゃないけど、あれがベストセラーとは・・・」
「都会人の観念論にしても、田舎の価値が見直されることは結構やないか」
「まあね・・・。全国の田舎には利用されていない膨大な地域資源が眠っている。でもそれらを再利用するにも相当な投資が必要になるし、間伐材のバイオマス利用といったところで、林業がある程度さかんな地域でないと難しいよね。全国に成功例はあるにしても数えるほどじゃないの?」
「そうやな、いろいろ条件が整わないとできんよ。建築材になる木を山から搬出するにしても、よほど計画的にやらないと赤字になるんやから、まして間伐材となると。丹波は山国でも林業と言えるほどの林業はないし、まず林道の整備からやらんといかんし、バイオマスのチップ工場を造ったところで、それを利用する工場がない・・・」
「まったく、機械や人件費を計算に入れずに、原価0円で地域再生なんて机上の空論だよね。NHKの教育番組みたいや。大東亜戦争の末期、エネルギー資源の枯渇で追い詰められた日本は、松の根油で飛行機を飛ばしたり木炭バスを走らせた。地域はそれくらいの情熱をもってやればいいということか・・・。こうなったら先ず、各家庭で薪ストーブの復活から始めないと・・(笑い)」
「ほんまやな、わしらの子供のころは薪で五右衛門風呂を炊いとったからね。昔みたいに風呂も薪で炊くようにしたら山の整備にもなるな・・・」
「いいね、やろう。五右衛門風呂くらぶを立ち上げよう! そしてNHKに取材してもらおう。あり余る間伐材の利用による里山資本整備のために、五右衛門風呂を復活しましたぁ。丹波五右衛門風呂ツアーにどうぞ、山に入って風呂の薪づくりからやってもらいます、ってね」
「あはは・・・それいいな!やろう、やろう!」
というわけで酒の席の勢いゆえ、里山資本主義についてはそれだけで終わり、この数年、丹波の若い人たちが活発になってきたことなどが話題にのぼったりした。

この日の山入りでは、シイタケ木(コナラ)を軽トラ4台分運んだが、薪ストーブ用に小枝の薪などを喜んでもらい受けるのはぼくとともう一人だけだ。もったいないことではあるけれど、いまやほとんどの田舎の家庭の暖房器具は灯油・電気・ガスだし、料理するのも風呂を炊くのもプロパンガス(または灯油、またはオール家電)だから。
この本を読むと、日本の田舎では多くの地域資源がリサイクルされているように錯覚しそうだが、残念ながら、山の間伐材ひとつにしても生かされていない(無駄になっている)というのが実情なのだ。

よく飲み、よく食べ、とくにAさんはよくしゃべりまくっていた。ぼくは10時過ぎには床に入ったが、声が人一倍でかいAさんは、まったくあきれるほど元気で、何人かと炬燵で2時過ぎまでしゃべっていた。

翌朝(15日朝)、朝食のあと、1か月前から稼働したという太陽光発電を見学に、メンバーのKさんの家に向かった。この夏、彼はソーラー発電建設(投資)のため、家の裏庭(約1000㎡)の栗や柿の木を伐採し、ぼくはその木をもらうために軽トラで3往復した。
彼の本業はクリーニング店だが、それでは食っていけなくなって昨年とうとう自主廃業した。
「素人が農業をやっても食えない」し、いろいろ悩み考えた末の結論が、老後の”生活防衛投資”としての太陽光発電だったのだ。
「売電1Kあたり42円の今しかない」と。
遊休農地が増え続けている丹波(丹波にかぎらず)では、この規模のソーラー発電が雨後の竹の子のようにあちこちで見られる。
里山資本主義という言葉は確かに目新しく(内容に新味はないにしても)、都会に住む人たちが田舎の価値を再認識してくれるののも大いに結構なことではあるけれど、結局、地域経済も政治(政策)の方向によって敏感に反応するということなのだ。ソーラー発電が普及するのはよいけれど、これが田舎の唯一の「サブシステムの再構築」だとしたら寂しいと言わざるをえない。
地域資源再利用(構築)の仕組みづくりは必要だが、おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に・・・、今更そんな懐かしいだけの過去にもどれるはずもない。田畑の草刈りすら困っているのだから。
5年後には米の減反政策が廃止されるということらしいが、そのとき地域はどんな変貌を見せるのだろうか。

■関連記事 
薪ストーブの効用

自伐林業システムを活用した間伐作業

太陽光発電のために樹齢50~60年の栗を伐る

※以下は参考までに・・・・ 「里山資本主義」の書評

「里山資本主義」藻谷浩介とNHK取材班、原価0円で地域再生を目指す新しいモデルがベストセラーに(The HUFFINGTON Postより)

7月に発売された『里山資本主義 —日本経済は安心の原理」で動く』(角川oneテーマ21)が反響を呼んでいる。発売3ヶ月で16万部を突破。3年前にベストセラーとなった『デフレの正体』の著者、地域エコノミストの藻谷浩介氏とNHK広島取材班による共著である。作家の佐藤優さんや歌手の加藤登紀子さんなどの有識者が推薦。首都圏だけでなく本の舞台となった中国山地など全国で売れているという。
「里山資本主義」とは、お金の循環がすべてを決するという前提で構築された「マネー資本主義」の経済システムの横に、こっそりとお金に依存しないサブシステムを再構築しておこうとする考え方だ。
この「里山資本主義」の事例として、中国山地で行われている林業再生の取り組みを紹介している。
戦後、衰退の一途を辿った日本の林業。そんななか製材業界で新しい試みをしているのが、岡山県真庭市の銘建工業だ。代表取締役社長の中島浩一郎さんは、日本に先駆けて1997年に「木質バイオマス発電」の導入。製材課程で出る4万トンの木くずを燃料にして、工場で使用する電気のほぼ100%をまかなっているという。今まで電力会社に払っていた電気代がなくなり、さらに夜間電力を売る売電収入がうまれた。また、産業廃棄物だった木くずの処理にかかっていた年間2億4000万円がゼロになり、トータルでは数億円のプラスになった。銘建工業がバイオマス発電の導入から14年。発電施設の建設にかかった10億円は早々に減価償却し、十分に元をとっているという。
この事例をうけて、藻谷氏は「このような事例を『マネー資本主義』の下では条件不利とみなされてきた過疎地域にこそ、つまり人口辺りの自然エネルギー量が大きく前近代からの資産が不稼働のままに残されてる地域にこそ、より大きな可能性がある」と分析。「マネー資本主義の評価指標、GDPや経済成長率を必ずしも大きくするものではない」が、「金銭換算できない活動が、見えないところで盛んになって、お金に換算できない幸せを増やす」という。
本書では、地域振興、社会保障、少子化といった日本が抱える課題の「里山資本主義」による解決策も紹介している。
KADOKAWAの担当は「それぞれの事例を、他の地域にも応用できるモデルにしたことで、全国で地域再生に取り組んでいる人からも『教科書に使える』という声が届いています。本で紹介したエコストーブや地域通貨など、人によって響くポイントが違いますが、今までジャンル別に考えられていた課題を、日本の社会、経済という大きな視点でまとめたことが、大きな反響につながっているだと思います」と話す。東京や大阪といった大都市を除く全国の知事に献本したところ、10県以上の知事からお礼の手紙や葉書が届いたという。
東日本大震災をきっかけに、お金があってもシステムやネットワークが破綻すれば、水や食料、電気が手に入らないことに不安を抱いた人も多いだろう。お金だけに頼らない新しいモデル「里山資本主義」がヒントとなるかもしれない。

The HUFFINGTON Post より

JB press press より
『里山資本主義──日本経済は「安心の原理」で動く』(角川書店)にはこうある。〈世の中の先端を走っていると自認してきた都会より、遅れていると信じ込まされてきた田舎の方が、今やむしろ先頭を走っている〉──。一体どういうことだろうか。
本書は端的に言うと田舎暮らしを勧める本である。田舎暮らしの魅力を伝える本は今までにも数多くあった。だが、本書がそれらの本と一線を画しているのは、ただ単に自然の中で暮らすことの楽しさや素晴らしさを喧伝する内容ではないという点だ。
本書は、日本が直面する社会や経済の問題と絡めて、田舎暮らしの意義と価値を語っている。今までの“田舎暮らし万歳”の本に比べると、捉え方がジャーナリスティックで巨視的である。
本書はこう唱える。2008年のリーマン・ショックによって「マネー資本主義」の限界があぶり出された。マネー資本主義とは、もともとはアメリカで生まれた、お金でお金を生み出す経済システムのことだ。また、2011年3月の東日本大震災によって、私たちが当たり前に利用している食料やエネルギーの補給路が実は極めて脆弱であることが明らかになった。だからこそ、今、日本では新しい経済システム、社会システムの確立が求められている。本書はそのシステムが日本の田舎で勃興しているという。「過疎」地域とも言える中国地方の山間地で生まれ、立派に機能しているというのだ。
そのシステムが「里山資本主義」である。定義すると、〈かつて人間が手を入れてきた休眠資産を再利用することで、原価0円からの経済再生、コミュニティー復活を果たす現象〉のことだ。
山の枯れ枝や不要な木材を集めて燃料をつくる人、耕作放棄地で野菜を育てて近所の人たちと分け合う人、それらの野菜を調理してレストランで客に振る舞う人、空き家を活用してお年寄りのためのデイサービスセンターを運営する人・・・。本書は、そうやって地域の資源を活用して田舎で生き生きと暮らす人たちの姿を通して、私たち一人ひとりの意識と生活様式の変化が地域再生、ひいては日本再生につながることを解説している。
「里山資本主義」という言葉をつくったのはNHK広島放送局である。2011年秋から同局は里山資本主義の中身と意義を掘り下げたドキュメンタリーシリーズを制作した。この番組が本書のベースとなっている。番組に毎回出演してナビゲーターの役を演じたのが、エコノミストの藻谷浩介氏だった。本書はNHK広島取材班と藻谷浩介氏の共著として出版された。
番組プロデューサーを務めたNHK広島放送局 放送部 報道番組 チーフ・プロデューサーの井上恭介氏に、里山資本主義に着目した理由や、その意義を聞いた。
続き JB press press