複合汚染

「これでも私は農本主義者だ」


「これは読んでおかなくては」と思いつつ、なんとなく遠ざけてしまう本がある。「世間を震撼させた問題作」といわれたこの本もそんな一冊だった。
読んでみて、驚いた。30年以上前に発表されたものとは思えない新鮮さとともに、古典的(歴史的)価値があったからだ。『沈黙の春』(レイチェル・カーソン)の日本版と言われたりするのも頷ける。

30~40年前の日本は、いまの中国のように、さまざまな公害が社会問題となっていた。だから本書は、企業の公害問題を告発するような内容かと思っていたが、全体のトーンは「食と農」に関する問題だった。今の消費者は当時と比べたら食の安全・安心に対する意識は相当高くなっている。にもかかわらず、本書の内容・情報が古臭さを感じさせないのは、現象面をとらえながらも食と農の本質に迫っているからだ。下巻の最後のあたりで、「これでも私は農本主義者だ」と宣言しているのには笑ってしまった。

   ベストセラー『恍惚の人』でも知られる有吉佐和子は、本書を著した9年後、1984年に亡くなっている。1931年生まれだから53歳の若さである。いま生きていたら、食の「複合偽装」問題を書いていたかもしれない。 村長  ( 2009.4.6 )

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